全カテゴリ
  ■ マンガ
    ▼ ザ・ファブル The second contact

  • 新着リスト
  • 新着コメント

    登録

  • ザ・ファブル The second contact

    南勝久 (講談社 ヤンマガKCコミックス)

    まあまあ(10点)
    2025年6月11日
    ひっちぃ

    殺し屋としての休業期間中に真黒組のいざこざに関わってから時がたち、野生児アキラはミサキと結婚して真黒組の下っ端や組織の同僚とともに穏やかな日々を過ごしていたが、弱体化した真黒組のなわばりを狙って紅白組が抗争を仕掛けてくる。映画化やアニメ化もされた人気アクションマンガの第二部。

    第一部がおもしろくて第二部もいつのまにか完結していたので読んでみた。アクション作品としてはおもしろかったんだけど、ドラゴンボールの映画みたいな付け足しで作られた作品のようでそこまで楽しめなかった。こういっちゃなんだけど、この第二部の一番のウリは第一部の続編であることだと思う。魅力的なキャラたちのその後が見られるという点で。

    紅白組がちょっかいを掛けてくるやり方がなんかリアルだった。下っ端にやらせるんだけど、相手の下っ端に因縁つけて手を出させるみたいな。仕掛けられた真黒組のほうは、組長の海老原の指示でうかつに挑発に乗らないようにするが、それでも紅白組は強引に抗争に持っていこうとする。下っ端を使い潰して。

    紅白組が強気になった背景には第一部で真黒組の幹部が何人も死んで弱体化したからだけでなくて、殺し屋組織「ファブル」と縁が切れたのではないかと踏んでのことだった。それは実際そのとおりで、アキラたちファブルはもう殺しはやらないことに決めていた。しかし、突っついてみたところまだファブルの影がちらついていたため、紅白組の松代組長はファブルに対抗するため殺し屋組織「ルーマー」を動員する。

    ファブルが子飼いのメンバーを育てている精鋭組織なのに対して、ルーマーは仕事に合わせてその場限りで殺し屋を募集して動員する人材派遣会社みたいな組織だった。リーダーの男が全然普通の一般人のような容貌なのが逆に異様な感じがした。こいつが淡々と人を集めて冷静に作戦を仕切っていく。

    最終的にどっかの公園で夜間にファブルとルーマーとが衝突して大きな戦闘になって盛り上がって終わる。

    アキラたちファブル勢が人を殺さないことを選んでいる理由がやっぱりなんかピンとこなかった。アキラたち自身もよくわかっていない。フワッとした理由でずっと話が進み、そのまま命の危険のある戦いに身を投じるのがよくわからなかった。まあ仲間を助けるためなんだけど、仲間の命を守るために相手の命のことまで考えられる圧倒的強者感?そこが共感できなかったんだろうか。

    作品の冒頭でイギリスの政治家で小説家だったベンジャミン・ディズレーリが処女小説の中で書いたらしい言葉「経験は思考から生まれ、思考は行動から生まれる」が引かれていて、それを作中の人物たちが反芻するシーンがあるんだけど、こんな難しい言葉をあのあまり頭の良くなさそうな(!)彼らがうんうんと噛み締められるはずがない。よくわからんのになんかありがたがってるみたいな描写でもないみたいだし、頭のいい人間に説明させているわけでもなかった。

    この言葉自体はとてもいい言葉だと思う。要は思考があって行動に移るのではなくて、行動したあとでそれがもとで思考が形作られ、その思考の整理によって初めて経験と呼べる蓄積が得られるみたいな意味なんだと思う。ざっくりと日本風に言うと「案ずるより産むがやすし」?考えて結論を出した上で行動するんじゃなくて、行動しているうちにその行動を説明づける思考が生まれるみたいな。まあ人間には本当の意味での自由意志はあるのか?っていう哲学的なことでもあると思う。

    だとしたら、彼らが人を殺さないことにした理由なんてのはいまはまだよくわかっていなくて、とにかくそれを実行することによって思考を生み出そうとしている、みたいな意味にとれる。そう考えると彼らの一見不可解な(?)行動にも納得はできるんだけど…。まあそれ以前にボスから殺しを止められているし。

    元殺し屋たちが「レンタルおっちゃんサービス」に登録して仕事をしているのがウケた。要するに何でも屋なんだけど、語感が愉快なのでそれだけで笑ってしまう。その仕事に従事している人のことをみんな「おっちゃん」と呼んでいる。大阪が舞台なので関西弁では普通の言葉なんだけど。なお、アザミとユーカリは第一部に出てきたデザイン会社でも働いている。

    自分がこの作品の中で一番不自然に感じたことは、結局強さこそ人間関係を形作る一番のポイントであるはずなのに、真黒組の黒塩がアキラをアニキと慕っていることなどを除けば、殺し屋たちの力関係がそこまで人間関係に影響を及ぼしていないことだろうか。人間なんて生き物は動物に過ぎないので、秩序がなければ犬のように上下関係のある群れ社会を作るはず。そうなっていないのであればなにかしらの秩序があるはずなのだけど、それがよくわからなかった。力がなくても稼ぐ力やみんなの役に立てることなんかがあれば上に立てるなど。時にはハッタリをかましたり。

    なにげにヨウコが大活躍する。アキラはそれこそドラゴンボールの悟空のように最後に登場してみんなの窮地を救う。それに対してヨウコは序盤の小競り合いからたまたま関わり、紅白組の組長である松代に執着されるほか、最後の戦いでも大きな見せ場がある。強くても女であり体格の差がある中でそれをカバーするような戦い方をする。クセのあるヒロインでおもしろくはあるんだけど、自分はあんまりこいつに愛着が持てなかった。今回、タコ社長に惚れるムーブがあるんだけど、まだ何考えてるのかよく分からないところがまさった。育ちが育ちだしそういうキャラなのはわかっているんだけど。

    敵もいろいろ個性的な面々が集まってくる。外部からかき集めてきた集団の必然として統率の取れていないところがおもしろかった。殺し屋のほかに、死体運びなどの雑用をするアリと呼ばれる下位構成員も出てくる。流行りの闇バイトみたいな感じなんだろうか。

    真黒組は組長の海老原が途中離脱して、臨時で誰を組長代行にするのか二人の候補の中から選ぶことになるのだけど、ちょっとした組織論が語られていてよかった。正直ちょっと浅く感じたけど、わかりやすかった。

    ルーマーのリーダーが最後に謎の覚悟をして松代組長のもとへ行くのが意味不明だった。そういう生きざまなんだろうけど、自分には理解できなかった。

    ファブルのボスがあいかわらず圧倒的すぎる。なんか忍者の里みたいだなと思った。

    この作品の世界が好きな人にとっては期待を裏切らない良い続編だと思ったけど、自分にはちょっと物足りなかった。

    [参考]
    https://yanmaga.jp/comics/
    %E3%82%B6_%E3%83%95%E3%82%A1%E3%
    83%96%E3%83%AB_The_second_contac
    t

    コメントはありません

    manuke.com