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  • ハレ婚。 11巻まで

    NON (講談社)

    まあまあ(10点)
    2017年3月13日
    ひっちぃ

    東京で男に裏切り続けられた小春は地元に帰ってくるが、知らないうちに故郷は「ハーレム婚」という名の重婚制度を取り入れた自治体として知る人ぞ知る場所となっていた。小春は伊達龍之介という怪しい男に口説かれるが、そいつも重婚者なのだった。青年マンガ。

    「婚」という字に惹かれて手に取った。わりと面白かった。題は「ハーレム婚」の略。

    小春がかわいい。ホットパンツをはいた快活な女の子で、ソフトボール部のキャプテンをやっていたスポーツ少女だったが(結構後ろの巻で語られる)、東京に働きに出て経験不足により男に騙され続ける。それで実家に帰ると家の借金問題が明らかになり、小春をなにかと口説いてくる龍之介が資金援助を申し出てくる。ただし結婚を条件に。

    男を嫌いになってしまった小春が戸惑いながらも仕方なく「ハレ婚」を受け入れ、結婚生活が始まる。男一人に女三人の。小春は男を嫌いながらも結婚に対するあるべき姿を思い描いており、こんなおかしい制度で龍之介の愛を受け入れられずに葛藤する。そんな小春の困惑や感情の揺れ動きが魅力的だった。

    ちょっと深読みのしすぎかもしれないけれど、作者は「ハーレム婚」という特殊な婚姻形態を描くことで、逆に結婚のなんたるかを描き出していると思う。女が複数人いることを除けば、龍之介は妻を平等に愛し、家族として自分をなげうってまで助け合おうとしている。それによって、結婚とは本来こういうものだというのを浮き彫りにしているんじゃないだろうか。まあ「一人の男(女)を愛し続けること」という一番大事(?)な決まりがないわけだけど、それってそんなに重要か?っていうことだと思う。

    龍之介は若い頃にちょっとした財を成してからは働くことをやめてゴロゴロしている。龍之介が昔なにをやっていてどうしてやめてしまったのかということが次第に明かされていく。それと龍之介は小春のことを衝動的に口説いたわけではなくて、小さい頃からずっと好きだったらしい。そのへんのことはそんなに描かれないので、軟派男ではないのだという釘刺しのためだけなのだろう。

    龍之介の一家を取り仕切るのは、町長の娘ゆず。元ヤンキーで胸が大きくてギャル風だけど家事ができて生活力がある。龍之介の一番の理解者といった感じで、ハーレム婚について大きな不満はない様子。小春がギャーギャー文句を言うのをいい加減分かれと時折たしなめる。

    まどかは口数の少ない美女でいかにも二号さんといった様子なのだけど、誰よりも重い理由で龍之介の傍にいることを選んだことが徐々に明かされる。そんな彼女だから小春のような軽い気持ちでハーレム婚を選んだ女が許せないらしい。

    小春の外見や振る舞いが魅力的なのと読みやすいのと奇妙な共同生活とでグイグイ読み進めていったのだけど、ストーリーは割とフワッとしていて掴みづらい。

    もしこの世で一番好きな相手にすでに恋人がいて、それでも一緒に暮らそうと言われたらどうするのか?というハーレム婚で一番の問題に対する答えが出ていない。まどかの場合がそうなのだと思ったのだけど、結局彼女の場合は特殊な成り行きがあったということで、別のストーリーが展開されたのだった。

    妻同士で争うかというとそんなわけはなく、龍之介はあくまで平等に愛することを約束し、履行している。問題は小春の心の中にある。一夫多妻制は男の負担が大きいと言われるけれど、心の負担は女の方が大きいんじゃないだろうか。作者は女性なのでこの点をもっと深く突いてくるかと思いきや、いつまでも小春を戸惑わせて遊ぶばかりで核心に踏み込んでいかない。一番寛容なゆずについてこれまでほとんど語られていないし、龍之介の気持ちがあまり描かれていないのは女の物語なのであればしょうがないところか。

    動物なら一夫多妻もあるのだけど、世界を制したキリスト教は一夫一婦だし、イスラム教も戦争未亡人をなんとかするためのムハンマドの一声によるものらしく実際ほとんどの人は一人の妻しか娶っていないみたいだし、その他未開な社会も同様だ。まあ王様には当たり前のように妾がいたわけだけど、王朝を無理やり存続させるための仕組みなので家族的には骨肉の争いの元にしかなってないと思う。あ、通い婚なんてのがあったっけ。

    絵はとてもいいと思う。最初にホットパンツと言ったとおり小春の生足がすごく魅力的で、この絵を見るだけでこの作品を手に取った価値があったと思ったぐらいだった。素足なので脚だけでなく足がいい。という足フェチの自分の性癖は置いておいても、おっぱいギャルのゆず、思いつめた二号美女まどか、控えめな女子高生うらら、と色んなタイプの女性をカバーしている。龍之介はロンゲが不気味な怪しい男として描かれているけれど、最新巻で短髪の頃の写真が出てきて爽やかそうなイケメンだった。男は少な目。ゆずの父親でもある市長のいかつい顔でお茶目なところが面白かった。体育教師もいい感じ。

    自分はヒロインの小春が魅力的だったので楽しめたけれど、分かりやすいストーリーを期待している人にはぼやけた作品だと思う。ハーレム婚という架空の制度のもとで生きる男女の営みを楽しめそうなら見てみるといいと思う。あと足フェチと。

    (最終更新日: 2017年3月13日 by ひっちぃ)

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