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    葉月抹茶 (スクウェア・エニックス ガンガンコミックスJOKER)

    まあまあ(10点)
    2015年6月10日
    ひっちぃ

    高校生の長谷(はせ)くんは同じクラスの無愛想な藤宮さんのことが気になり、勇気を出して声を掛けるが冷たくあしらわれる。藤宮さんのことを諦めきれない長谷くんが食い下がると、藤宮さんは驚くべきことを言う。自分は一週間たったら親しくなった人との記憶を失ってしまうのだと。少年マンガ。

    2014年4月からアニメ化されたのを見てまあまあ面白かったので原作にも手を出してみた。原作も良かったけれどアニメ化も良くて、そういう意味で改めて原作を見てもそんなに得るところはなかった。

    すごく純朴な話で、空気感が暖かい。最初は無愛想だった藤宮さんが、長谷くんのアプローチによって意外と早く打ち解ける。読んでいてこっちが恥ずかしくなるような初々しいやりとりが繰り広げられ、二人は仲良くなっていく。しかしそれも一週間でリセットされてしまう。

    長谷くんの「僕と友達になってください」という、現実では聞きそうで絶対に聞かない言葉が作中で繰り返される。藤宮さんは毎週月曜日になるとそれまでの一週間のうちに親しくなった人のことを忘れてしまうので、最初は長谷くんのことをびくびくしながら受け入れていたのだけど、日記をつけたり忘れない何かがたまっていくにつれて長谷くんの言葉を待ちわびるようになる。

    長谷くんは優柔不断で色々考え過ぎる人なので、友達の桐生くんが彼の背中をいつも蹴飛ばしている。桐生くんはさっぱりしていてあけすけで、不愛想で薄情に見えるのだけど、長谷くんにすがられたらイヤイヤながらも相談にのってやる。こいつがなんだかんだでストーリーを引っ張っていっている。

    藤宮さんの記憶を失う症状がこのままなんとか少しずつでも良くなっていけばと思って色々やっていくうちに多少は良くなるのだけど、やはり何か根本的な原因があるんじゃないかということになってその謎を探っていく。そのカギを握る九条一(はじめ)が転校してきてから、話が大きく動き出す。

    正直自分はあんまりこの話を楽しめたとは言いがたいと思う。藤宮さんや長谷くんみたいな素直な人に対してそんなに興味を持てないのだった。確かに好ましい二人で見ていてホッコリするのだけど、何より自分自身が彼らのようなやりとりを好きな相手としてみたいとは思わない。なんだろう。長いこと生きてきてだいぶ傷ついちゃったからだろうか?

    藤宮さんの謎は納得できた。そういうことだったのか!といった感動まではいかなかったのだけど、謎が明らかになったことで楽しめた。

    突き抜けたところはないけれど、完成度の高い作品だと思う。絵もいいし独特だし。

    アニメを見ていたときは、山岸さんという超天然の女キャラが作品をぶち壊しそうな気がしてヒヤヒヤしたのだけど、改めて原作を読むとそうでもないような、でもやっぱり危ういような感じがする。こいつと桐生くんの挿話があって、あの冷めた桐生くんのガードを天然山岸が少しだけ切り崩すのがいい感じだったんだけど、思ったほど楽しめない自分がいた。やっぱり自分はこの作品の登場人物にそんなに思い入れることが出来なかったんだなあと思った。

    毎回毎回途中から4コママンガになる。テンポが変わる。それまで登場人物のすぐ横にあったカメラが急に遠ざかって突き放した感じになるのが、作品世界への没入を妨げていたと思う。あまりにストレートすぎる話を今の人に自然に伝えようとするための工夫なんだろうか。それともコミカルな感じにしたくてやっているんだろうか。

    アニメの話になるのだけど、エンディング曲「奏(かなで)」がいいなあと思いながらもどっかで聞いたことのあるようなベタな曲だなあと思っていたら、一時期よく聞いていたスキマスイッチのベストアルバムに収録されていた曲だった。アニメでは藤宮役の雨宮天が歌っていたので、男性デュオの原曲とすぐには結び付かなかった。気付いた時はちょっとうれしかった。聴き比べてみると、原曲はなぜかオリジナリティを感じ、女ボーカルだとベタに聞こえる不思議。

    アニメの長谷くん役の声優さん(山谷祥生という人)がとても良かった。「僕と友達になってください」のセリフが特に良かった。自分にとってはどうしてもアニメ版の方の印象が強くなってしまう。原作ファンがどう思っているのか知らないけれど、すごくいいアニメ化だったと思う。

    というわけで原作よりアニメを見て欲しいところなんだけど、4コマの部分のコミカルなところとか、自分のペースで読みたいという人にならこの原作マンガを勧める。

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