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    福本伸行 (講談社 KCDX)

    傑作(30点)
    2015年2月22日
    ひっちぃ

    日本有数の進学校でその中でも三本指に入るほどの頭脳を持つ17歳の少年・宇海零(ゼロ)。頭がいいだけでなく義に厚くて仲間思いで度胸も据わっていた。ある事件がきっかけで日本一の資産家の目に留まった彼は、世界を舞台にしたギャンブルの日本代表を選抜するための気違いじみたテーマパークでの戦いに参加する。少年マンガ。

    作者は「カイジ」「アカギ」シリーズなどで知られる福本伸行。ギャンブルや裏社会を扱った圧倒的に面白い筋書で読ませる稀代のストーリーテラー。その福本作品の中でも、一番下に位置付けているネット評が目に留まったので逆に気になって読んでみた。

    週刊少年マガジンという週刊誌で連載していたせいか、主人公がとても若い。そして頭脳明晰で性格までいいという、福本作品の中では逆に異色のヒーローになっている。

    導入部ではそんな主人公零の紹介も兼ねてか、彼が集団自殺しようとした若者たちをとめ、一緒に振り込め詐欺グループから金を取り返す活動をする話が描かれる。ところがその企ては仲間が欲をかいたせいで失敗する。その場はなんとかなるものの、その後の展開を暗示しているのだった。

    そこから先は狂気のテーマパークで生死や肉体の一部を掛けたアトラクション(?)の数々をクリアしていく展開になる。すごく面白い。謎解きの要素と、命すら奪われかねないえげつないペナルティ、そしてそれらをくぐりぬけるために団結する熱い展開がある。

    ただ、なにか物足りない。主人公零の内面描写が寂しい。実写映画化された「カイジ」「アカギ」と比べると、主人公が魅力に乏しいと思う。「カイジ」は等身大の愚かな若者が目覚めていくし、「アカギ」は危ういながら一本の筋が通った独特の生き方を見せるし、最近また再開された「黒沢」は人望のない中年男が奮起するのだけど、この「零」は一体どのあたりが魅力なのだろうか。

    少年誌向けということで、少年なのにめっちゃ頭がよくて仲間思いのキャラを主人公にしよう、ってことなんだろうか。コナンくんみたいな?でも愛嬌がないんだよなあ。弱みとか秘密もないし。なにか生い立ちのようなものを描いて、こいつの行動原理や背景なんかを見せてほしかった。

    あと第一部、単行本8巻の最後がひどすぎる(笑)。逆に笑えるので、これから読む人はむしろ楽しみにしていてもいいぐらいだと思う。

    とまあいまいちなところもあるけれど、福本作品にハズレなしということが自分の中で証明されたほどなので、読んで損のない作品であることは保証したい。

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