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    ぢゅん子 (講談社 講談社コミックス別冊フレンド)

    傑作(30点)
    2015年1月10日
    ひっちぃ

    オタク趣味で特にボーイズラブ(男の子同士の恋愛もの)が大好きな高校生女子の芹沼花依は、太って醜い自分自身のことには頓着せず、学校の男の子たちが時折見せる友情のしぐさを見て日々妄想をたくましくしていた。しかしある日、好きなアニメのキャラが作中で死んでしまい、ショックのあまり一週間絶食した結果痩せてキレイになり、いままで眼中にされていなかった男の子たちから求愛されて困惑する。少女マンガ。

    面白いタイトルの少女マンガなので手に取ってみた。なんとこれ別冊フレンドというメジャーな少女マンガ雑誌に連載されているらしい。冒頭、ジャージ来たデブ女が醜く興奮したり事故で突き飛ばされてひどいめにあうシーンなんかがまるで少年誌のギャグマンガみたいで笑った。いくら腐女子ブームだからってこんな作品が堂々とメジャー誌に載っているなんて。作者自身あとがきでこの企画が通ったことに驚いていてなおさらウケた。

    で導入部がひと段落すると、主人公の女の子がいわゆる逆ハーレム状態になってモテまくるのだけど、中身はボーイズラブ好きのオタク少女なのでギャップに悶える。また、普通女の子ってモテたいと思うだろうに、自分そっちのけで男の子同士のやりとりに見入ってしまうのを見て読者がニヤリとする。そんな感じの作品なのだった。きれいになってからの主人公の女の子が妄想のたびにオタ顔になって悶えたり興奮したりするのが面白い。

    もう腐女子の腐り具合のギャグが爆発的に面白くて、何度も声に出して笑った。クラスの男子、五十嵐くんと七島くんが肩を組むシーンを見て、頭文字をとって「5×7だってえー」「7×5だね ゆずれないね」と腐女子同士がキャッキャとトークしているのだけど、これ説明なしで分かるんだろうか。ボーイズラブにも文法があって、「人物名×人物名」というのが二人の男のカップリングをあらわす式なのだけど、先頭が「攻め」で二番目が「受け」つまりどっちが主導権を持っているのかを意味していて、「A×B」と「B×A」では全然意味が違ってきて時に大ゲンカになったりするのだという知識が前提として必要になって初めて笑えるんじゃないだろうか。まあでも説明不要なギャグのほうが多くて、抱き枕とかガチエロい本とかが部屋にあったりとか。途中から主人公の女の子は開き直ってオタク趣味を隠さなくなるのだけど、そんな彼女についていけない男の子たちの引くさまがまたウケる。

    話も普通に面白くて、メインヒロインならぬメインヒーローが四人いて、四者四様に個性的だし、4巻までにそのうちの二人を掘り下げる話が展開される。彼らはライバルなのでいがみあうこともあれば、仲良くして主人公をひそかに興奮させたりもする。

    ただ、絵がちょっとヘタで、特に最初の頃は顔の影のスクリーントーンがまるであざのように見えて不安だった。あと、痩せてキレイになったあとの主人公の女の子の描かれ方が若干白痴っぽい(この言葉って使っちゃいけないのかな?)感じがする。でも巧拙関係なく絵に魅力があるので、絵もこの作品の大きな魅力になっていると思う。

    ここまでの展開で再び主人公の女の子が太って元の姿に戻る話があって、そこで美醜の問題に切り込んで見せるのだけど、結局また痩せるのでうやむやになる。この点に鋭く突っ込んでくれる作品がないものかと思うところではあるのだけど、この作品に関して言えば要らないと思う。ただただ腐女子ギャグで笑わせてほしいのだった。でもどうなるんだろうこの先。

    れっきとした少女マンガながら爆発的なギャグものとしてアニメ化された松本ひで吉「さばげぶっ」を見たときも衝撃を受けたのだけど、それに勝るとも劣らないこんな作品まであるなんて、ほんと改めて少女マンガに底知れないものを感じたのだった。

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