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  • WORKING!! 10巻まで

    高津カリノ (スクウェアエニックス ヤングガンガンコミックス)

    まあまあ(10点)
    2011年11月27日
    ひっちぃ

    ファミレスでバイトする人々を描いた4コマギャグマンガ。主人公の小鳥遊(たかなし)宗太は高校二年生の男子。上に姉が三人いて小さい頃女の子のように育てられた過去を持ち、両親が不在がちの家庭で長身のだらしない姉三人の世話をして家事を一手に引き受けていたため、小さくてかわいいマスコットキャラや子供が大好きだった。あるときまるで小学生にしか見えない高校生女子の種島ぽぷらから勧誘され、変人揃いのファミレスでバイトすることになる。いい加減な女性店長、脇に刀を差した女性チーフ、男性恐怖症ですぐ男を殴る同世代の女の子、ひねくれた性格をした厨房担当の男子二人などと送る日々を描いたマンガ。

    と要約を書いて改めて思うまでもなく、この作品は結構ベタベタであんまり面白くなかった。

    最初アニメ化されたものを見てこの作品を知り、主人公が自分も変態のくせにやたらと人に突っ込んで「俺は普通なのにまわりがヘンすぎてやってられない」的な空気に萎え続け、それでも我慢してたしか三話ぐらいまで見たのだけど、ついに男性恐怖症の暴力女が登場するに至って視聴継続を断念した。

    その後、この作品のアニメ二期が始まるとかで一期の再放送が始まり、小学生にしか見えない高校生女子の種島ぽぷらの役を私の大好きな声優阿澄佳奈がやっていることが分かり(まあ出演作品を追っかけていないあたりニワカぶりが分かるというものだけど)、もう一度挑戦しようと思って再放送からアニメを見始めると同時に、原作マンガのほうも読んでみることにした。で、なんとかアニメ二期を見続けているし、原作マンガも最新刊まで読んでしまった。

    4コママンガってどうしてもパターンみたいなものが出来てしまう。4コマでオチをつけなければいけないから、登場人物に変わった人が多くなる上に、4コマ目でなんらかの突っ込みをいれて落とさないといけないから、中途半端な出来の作品だと「大して面白くないキャラクターが毎回毎回さも面白いかのように持ち上げられる」というとても不愉快な感じになる。

    特に「いい加減な人」という安易なキャラ類型がひどい。この作品の中では店長と主人公の姉のうちの二人がそれにあたる。店長なのに!いい歳なのに!というギャップで笑わせようという意図が露骨すぎる。このタイプのキャラはボケてもあまり体面に影響しないので魅力に乏しいと不快感しか残らない。嫌な先輩の武勇伝を聞かされてる感じ。本人はおどけているつもりなのにイラッとくる。

    次に「ものすごく変わった人」というキャラ類型。この作品では刀を差した女性チーフと、男性恐怖症ですぐ男を殴る女子高生がこれにあたる。あまりに変わっているため常識的な突っ込みが成立しないという突き抜けたキャラなので作品をダイナミックにしてくれるけれど、やりすぎると作品の世界観を台無しにしてしまう。刀のほうはあっさりと描写されているので一回笑ってあとはスルーすればよかったのだけど、主人公を殴る女のほうはとにかく殴りまくってストーリーを引っ張っていくので色んな意味で腹が立ってくる。

    とまあ、つまらない作品を読むとこうして色々と考え事をしてしまう。

    じゃあなぜ読み続けたのかというと、私にとって面白いと感じられる要素もそこそこあったから。作品の途中で山田葵という家出少女が出てきて、こいつにツボった。

    舞台となるファミレスは普段は店長以下全員アルバイトで成り立っているのだけど、たまに社員のおっさんがやってきて色々チェックをする。このおっさん、このファミレスを野放しにしているあたり、人が好すぎておとなしくて店長のいいなりになっている。ある日このおっさんが家出少女を連れてくる。山田を名乗っているけれどあからさまに偽名だというところから面白すぎる。調子がよくて、頭が悪いくせにこざかしいことをたくらんで失敗したり、やたらと人に甘えたがって邪険にされたりする。

    この山田葵という少女も、言ってみれば「いい加減な人」で、設定的には店舗の屋根裏に住み込みで働く家出少女という「ものすごく変わった人」なんだよなあ。

    突き詰めていくと結局、とにかくキャラクターが魅力的かどうかということにまとめられてしまうわけで、魅力さえあればなんでも許されるどころか逆にチャームポイントになってしまうんだろうけれど、逆に言えば魅力を感じられないと不快になってしまう。人には好みというものがあり、好きなキャラもいれば嫌いなキャラも出てきてしまうし、読者それぞれに好きなキャラがいることを考えるとしょうがないのかなとも思う。

    男キャラについてあまり書かなかったけれど、厨房組二人はそれぞれいい性格をしていてよかった。金髪の佐藤は普段、小柄な女の子の種島ぽぷらをいじって遊んでいる一方で、チーフの刀差した女のことが好きなのに外見に似合わず一歩踏み出せず微妙なアクションしか起こせなくてかえって誤解させる。一見まともそうな相馬は、どこからか入手した他人の過去を武器に人に優位に立とうとするけれどたまにしっぺがえしを食らうし、基本的にはいいひとなので他人の相談にのってやったりする。

    準レギュラーキャラたちが結構ひどすぎる。特に店長の後輩の元ヤンキー、主人公の姉たち、山田葵の兄、マネージャーの妻あたりが。主人公の唯一の妹(小学生なのに身長が主人公と同じぐらいで性格が大人)はちょっと弱い感じ。

    恋愛沙汰とかで時々シリアスなストーリーモードで進むときがあって、一応話が進展して決してつまらないわけじゃないんだけど、なんだか微妙だった。また日常モードに入ったときに、キャラ同士の関係が少し変わったことで状況に変化が見られるところはちょっと面白かったけれど、そもそも話が微妙なんだよなあ。

    キャラ同士の掛け合いの妙とか、思わぬ方向の視点からの突っ込みなんかで面白いと感じることがたびたびあった。全体をとおしてみると大して面白い作品じゃないんだけど、魅力がところどころにある感じ。好きなキャラとか魅力を掘り起こして読んでいける人になら勧められる。

    (最終更新日: 2012年4月15日 by ひっちぃ)

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