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    ジェイムズ・キャメロン監督

    最高(50点)
    2010年1月2日
    ひっちぃ

    人類が宇宙開発を行っている空想未来のとある惑星では、自然と共生し独自の精霊信仰を持つ異星人たちが暮らしていた。人類の学者たちは彼らと文化交流をしようと、彼らに似せた人造の肉体アバターを作り、人間と神経を同期させて感覚を共有し自由に操れるようにし、彼らの社会に溶け込んで深い交流をすることを目指していた。しかし彼らの集落の下に貴重な資源が眠っていることが分かり、企業と軍人が資源を得るために強引な行動に出ようとする。下半身不随になりながら経済的な事情で海兵隊を退役することが出来ない主人公は、学者である兄が事故死したことで、個人個人の人間に合わせて作られた高価な人造肉体アバターを代わりに使って異星人と交流する仕事を引き受ける。軍人の身で学者の仕事に関わることになる主人公は、軍人と学者、人類と異星人との間で板ばさみになる。

    映画タイタニックで巨大客船を見事なCGで再現したジェイムズ・キャメロン監督が、今回は異星人や異国の超自然を完全なCGで描いてみせたSFアクション大作映画。ネット上の知り合いが勧めるので見てみた。

    とにかく世界が圧倒的だった。導入部の宇宙船の救護室?の奥行きある空間から始まり、異星人ナヴィの風体、アマゾンのような独特の深い密林と動植物、未来風の戦闘艇。

    ストーリーは悪く言えば単純なのだけど王道で力強い。異星人ナヴィはまるでインディアンのようだった。主人公は人造肉体アバターを操作中にアクシデントに見舞われて一人になって獣に襲われているところを異星人ナヴィの若い女性に救われ、単身で彼らの集落に入ることになる。そこで最初は拒絶を受けながらも次第に打ち解け、異星人の女性と仲良くなり、一族の男としても受け入れられていく。何も意外性がないけれど物語に引き込まれる。

    この作品にテーマを見出すとすれば、未開とされる民族に対する先進国の思い上がりと勝手な振る舞いへの批判が一番大きいと思う。まさにアメリカがインディアンに対して行ったことを痛烈に批判している。しかし正直なところ私はこのテーマにそんなに重きが置かれているようには思えなかった。自分が大切に思えるもの、つまり主人公にとっては異星人の女性やその一族や自然への愛、異星人にとっては自分たちの土地への愛、学者にとっても異星人の文化への愛、といった愛の力強さへの感動が一番大きかった。観終わって冷静に振り返るとストーリーの語り方に少しお粗末なところがあるようにも思えたのだけど、力強い愛の語りにだいぶ押し流されてどうでもよく思えた。

    CGで人間を描くことを避けたのは正解だと思う。スクウェアがフルCG映画で大コケした理由の一つは多分フルCGの人間の不気味さがあったと思う。人間の美的感覚からすれば明らかに醜悪な外見を持った異星人ナヴィが、次第にかっこよく見えてくる。制作風景をNHKのドキュメンタリー番組でやっていたので見てみたら、人間の俳優の顔の表情までモーションキャプチャしていた。これまでの作品にあったような、フルCGの人間にあった違和感が、異星人という逃げもあったがほとんど感じられなかった。

    異星人ナヴィの肉体がとてもエロチックに感じた。このまま発展すると、生身の人間以上に魅力的なエロCGが出来るんじゃないかと思った。

    SFという一般受けしにくいジャンルで、いや、だからこそここまで一般的で分かりやすいテーマを堂々と語ることができたのだと思う。SF作品としても、恋愛モノとしても、そして戦争ものとしても非常に完成度が高くて間口の広い作品なんじゃないだろうか。ただ、タイタニックのような作品と比べると、一般的な観客層からすればちょっと込み入りすぎていて理解されにくいかもしれない。

    ただ、アバターという人造肉体を介した愛は果たして成立するのか、というテーマについては正面からは取り組んでおらず、その点については題名倒れで残念に思った。

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