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    編著:副島隆彦 SNSI副島国家戦略研究所 (成甲書房)

    傑作(30点)
    2008年2月25日
    ひっちぃ

    一般に知られていない日本の真実と題して、国際情勢下の日本の現在と歴史について何人かの執筆者が調べてまとめた本。11つの話に分かれており、国際金融資本家の動きや、戦国時代の日本の金銀の流通、日本海海戦で観戦武官が指揮していたなどがある。

    普通の人の感覚からするとこの本はだいぶ怪しい感じがするだろうが、インターネット上にはこれよりもっと怪しいコンテンツが色々あり、読んでみると結構説得力があるので、私はいまさらこういう本に抵抗は無かった。

    私がこの本を買う決め手となったのは、日本海海戦で観戦武官が指揮をしたという主張が結構説得力があったからだ。日露戦争については司馬遼太郎「坂の上の雲」が日本人にとっての決定版となっているが、この作品が書いていないことやおかしな点を指摘している人がいくらかいるらしい。でこの章の作者は最新の砲術の導入なんかも含めて日本海海戦はイギリスやその友好国によるイカサマに近いやりかたで勝ったのではないかと主張している。ちゃんと資料を揃えて論証しているし、当時の国際情勢から考えても不自然な点が少ないように思ったので、まあ全部が全部信じるわけではないが他の話も読んでみたくなって購入を決断した。

    日本海海戦についての私の考えは、さすがにイギリスに手取り足取りやってもらって勝ったというのはおかしいと思う。だったら第二次世界大戦の緒戦で日本が見せた強さも、戦後の日本の経済成長も、全部イギリスやアメリカのおかげだと言えるだろうか。ただ、ほとんどの軍艦をイギリスから買っていたのは動かしようのない事実だし、日本人のプライドを考えて隠蔽された事実というのはこの本の主張どおりあったと思う。

    坂本龍馬が今で言うところの「外資の手先」だったという指摘も多分本当だろうと思う。あれだけ露骨に西洋のものを身につけ、日本初の商社を作ったのに、ぜんぜん外国の影響がないなんてことは絶対にありえない。私は読んでハッとした。なのに多くの日本人が無邪気に坂本龍馬を愛している。この歪みは必ずどこかに現れるだろう。

    とまあ以上が分かりやすい歴史の話だが、中には結構分かりにくくて微妙な話も入っている。一つ一つの指摘は興味深いものの、書いている人が何を一番言いたいのかよく分からなかったものもあった。個々の事実を結びつけて考えすぎているように感じられるものもあった。金融はそこまで強力な支配権なのか。少なくともEUはそのくびきから逃れようとしていないか。中国は?ロシアは?現在の英米はそこまで強いのか?と田中宇なんかと読み比べてみて思ったりする。

    日本は英米のあとを追っている、なんていう主張もされているが、現在進行中のサブプライムローン問題なんかを見てると逆に日本の不動産バブルのあとを英米が追っているような気がしないでもない。なんでも債券化なんていうのは表面の技術的な問題に過ぎないだろうし。

    イギリスの歴史に関わる内容は、教科書の延長線上にある学校では習わない歴史が語られていて、私にとってはこの本で一番面白かった。ディズレーリとかグラッドストンとかなんて名前しか覚えていなかった。重商主義とかの世界史的な意味がようやく掴めた気がした。

    私はこの本をトイレに置いて少しずつ読んだので、熱心に読み進められるような本かどうかは判じにくいが、どの話もそれなりに興味深かった。一方で、あまり過激な主張はなくて面白みに欠けると思う人もいそうだ。すぐに人に話して話題のタネにするようなものでもない。

    自分の世界観をよりもっともらしいものに更新したいと考えている人には勧める。ちゃんと自分の世界観を持っている人でないとあまり面白く感じないと思う。世界はこうなっている!という一方的な内容が良ければ他にもっといいものがあるだろう。

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