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    20世紀フォックス

    最高(50点)
    2006年12月9日
    ひっちぃ

    未来に起こるであろう殺人現場を予知夢のような形で見ることの出来る超能力者を利用して試験的に特定地域限定で犯罪予防を行う組織が生まれ成功しつつある近未来世界で、主人公の捜査官ジョン・アンダートンは何者かにハメられて自分が殺人予定者として追われることになり、誤りの無かったシステムがなぜそのような予知を行ったのか必死で逃げながら探求する。

    素晴らしい映像美。予知夢のリアリティ、町中や身辺にあふれる広告映像、進歩した科学と並存するスラム街と人々。CGを使った作品は数多くあるが、ここまで現実味にあふれた美しい使い方をした作品はなかなかないと思う。

    主人公ジョンには子供がいたが失われてしまった。彼は自室で時々思い出の映像を観て過去を懐かしむ。痛ましくも美しい。そんな前振りがあるので、正直なぜ彼が殺人を犯すと予知されたのかが途中で分かってしまった。多分少なくない人がここまでの筋道を想像できると思う。

    ただ、物語はここから一転する。このシステムの最大の欠点は、冤罪を生んでしまう可能性があることだ。起こるはずの未来を防いでしまうことによる不確定性と、システムに手を加えて捏造することが出来るのではないかという疑いが残っている点だ。主人公が調べていくうちに、何者かが予知システムに手を加えたことが分かる。そして最後に明かされる抜け道の存在。ごく人間的な抜け道なので誰もが納得できるだろう。題であるマイノリティ・レポートは、予知夢の中で多数決により切り捨てられるものを意味しており、それがカギとなる。

    SFとしての優れたアイデアと仕掛け、社会派としての問い掛け、人情ものとしての挿話、そつのないアクションシーン、そしてそれらをからめて観る人を引きつける謎解き、どれもレベルが高い。大量の観客を動員する本格的エンターテイメントとしてここまでよく作られた作品はそうないと思う。特に、SFをここまで自然に完成度の高い総合的な作品に仕立て上げたのはちょっとした奇跡だ。

    非常に面白かった。しかし難を言うと、私の中では面白いというだけで終わってしまったことだろうか。あと、ラストは劇的だったが、そこに至る過程にはやや首を傾げた。劇的なラストを演出するためにちょっと無理をした感があるが、これは仕方のないところだろうか。

    (最終更新日: 2006年12月9日 by ひっちぃ)

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