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    槙ようこ (りぼんマスコットコミックス)

    傑作(30点)
    2006年11月26日
    ひっちぃ

    天然で頭の軽い高校生・片倉結平が、突然母親に捨てられた五歳女児・ゆずゆの世話をしたり、母親を幼い頃に失っている同級生の女の子・徳永心と付き合ったりする、母親をテーマにして幼児とのつながりを描いた心温まる話。

    集英社の小中学生向け(?)少女漫画雑誌りぼんに連載されていた少女漫画。

    まず、この物語の中心にいるゆずゆがかわいい。五歳児にしてはありえないぐらい整った絵で描かれているところが気にならないこともないが、屈託のない言動や所作がいちいちかわいい。小さいなりに悩んでいるところとかがいい。片倉結平への無邪気な好意が気持ちいい。

    しかしなんといっても私は片倉結平が気に入った。家族とくに姉に頭が上がらなかったり、自分で自分のこと頭が悪いと素直に認めていたり、気軽に女の子に話しかけて馬鹿にされていじられてモテモテだったり、ゆずゆや徳永心を思いやる気持ちや、自分が人に言われたことをまっすぐ受け止めたり、一方で自分が正しいと思ったことをはっきり言う。

    普通少女漫画というとこの手の話では女の子が主人公になることがほとんどなので、この物語は非常に画期的だと思う。とかいって過去にある類例を私が知らないだけのような気もする。

    ヒロインは形で言えば徳永心だが、片倉結平にはゆずゆもいるので、普通の恋愛モノにはならない。ゆずゆに問題が起こると片倉結平は徳永心を放っておいてゆずゆを助けに行く。徳永心もそんな片倉結平だから好きでいつづけられる。そういうけなげなところもいい。

    徳永心をはじめとした女子学生たちの言葉遣いがくだけていて乱暴で気さくでリアルだと感じた。男の作家にはこのリアルさは出せない思う。彼女たちの挙動もとても魅力的だ。

    読み終わって不満だったのはラストの展開だ。必要十分ではあるのだが、物足りなさを感じる。作者はあとがきで、あえてこのような終わり方にしたと言っている。どのような意図か詳しくは分からない。普通に現実的だと思うし、物語は普通に終わったのだが、何か言いようのないものが胸の中に残った。終盤ゆずゆが母親のことを忘れそうになるという筋にドラマチックなものを期待してしまったからだろうか。あれは幼稚園の先生の言葉で解決してしまっているのだろう。五歳児に心の葛藤とかそんなものを語らせたところでウソっぽいだけだから、これでよかったのかもしれない。

    ラストに限らずこの物語にはちょっとしたものから激しいものまで多くの振りがあるのだが、キッチリ決まったと思えるような結末がなかったように思う。これでいいの?というぐらい落ち着いた結びだったり、激しい筋がもやもやと解決していったり。そういうところが本作の空気なのだろう。悪く言えば、煽るだけ煽っておいてこれ?と思うことしばし。どちらかというとあまり煽らない方向で調整してほしかった。私はこの作品のおだやかなところが好きだ。

    絵はりぼん絵。時々人物の区別とくに終盤姉とママの区別がつかなくなった。りぼんの作家はこのタイプの絵を強制されるらしいという話を聞いたことがあるが、このタッチに読者も慣れているだろうから区別がつくのかもしれない。

    私はこの作品をアニメ版から先に知った。海外のファンサブ(海賊版で無料でダウンロードできる)を漁っているときに発見した。アニメ版は原作のタッチから雰囲気まで原作に忠実だったと思う。結末が違うけど。あ、アニメ版の結末忘れた。確か原作の最後まで行かなかった気がする。私がアニメ版から見たせいかもしれないが、原作のラストを踏まえた上でアニメ版のラストを考えたのだとしたら良い判断だと思う。忠実すぎたり野心を抱いたり(原作を超えようなどという)しないバランスが良い。

    アニメではオープニングもエンディングも一青窈(ひととよう・台湾出身歌手・母親は日本人らしい)が歌っている。これ聞いて思わずCDも買ってしまった。

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