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  • 新装版 集合とはなにか

    竹内外史 (講談社ブルーバックス)

    傑作(30点)
    2006年11月4日
    ひっちぃ

    数学で習う集合という概念の駆け足での説明から、数学を基礎から定義する方法、定義する段階で公理系の取捨選択によりいくつかの異なる集合論があることを時系列で紹介し、それぞれが抱える仮定や限界などの問題点から将来への展望までを書いた本。

    とにかく難解な本だ。50ページにも満たない第一章で述語論理式まで使った集合周りの数学の文法を一通り解説する。理科系の大学での数学の授業と同じくらいのレベルの内容をサラリとやってしまうので、習ったことのない読者がついていけるのだろうか。

    第二章で集合による「天地創造」を行う。普段私たちが当たり前のように使っている自然数から最初はないものとして定義しようというのだ。大学の教官が授業の余り時間に自分だけテンションを上げてさわりだけ熱心に説明していたのを思い出した。この時点でもう数学の専門家しか踏み込まない領域に入っている。

    第三章となるともうちんぷんかんぷんで、どうやって集合論を定義しようかという数学者たちの歩みを順に説明していく。素人からしてみれば、現時点で一番有力な考え方をただ一つ教えてくれれば十分だと言いたいところだが、本書は実用書ではないのでみっちり教えてくれる。

    BG集合論だとかZF集合論とか、これこれは不完全な部分があるけど解析学を発展させたとか、数学の証明方法の一つが生まれたとか、問題を置き換えることが出来るようになったとか、問題が深い深いところへ入っていく。

    私が乱暴にまとめてしまうと、要は「すべての集合の集合」というものを考えたとき、じゃあその集合は自分自身がその中に含まれているんだよな、それっておかしくないか?という疑問が一番根元にある。有名な例を挙げると、「張り紙禁止!」と書かれた張り紙が壁に張られていることをどう考えれば良いのかということだ。

    そこからゲーデルの不完全性定理なんかが出てきて、一つの閉じた論理体系が自らを無矛盾であると判断できないという話になったり(張り紙について規定する張り紙はありえない、またはその張り紙は上位の張り紙である)、定義にも順序というものがあって、あるものが定義されている時点ではこれはまだ定義されていないはずだからこの記号を使ってはいけないはずだとか(張り紙を禁止する張り紙を張る時点では他に張り紙がないから)、集合について考えたときに初めて出てきた様々な疑問点から数学についての本質的な研究が進んでいく。

    それにしてもこの本は目的を果たしているのだろうか。まえがきには、三種類の読者を想定していると書かれており、読者のレベルが低い前提で書いたとのことだ。しかし最初に書いたように、この本はとてもとても難解だ。

    それでいて作者は淡々と説明しつつ、時にお茶目にカタカナで一般週刊誌の文章のような言葉遣いをしてみせていて面白いのだが、全然分かりやすくないので摩訶不思議な世界が繰り広げられている。

    私は専門家ではないし特に後半部はそんなに理解できていないのでなんとも言いがたいのだが、本当に数学が好きな人にとっては妥協のない本だと思うので、がんばって読んでみるのも悪くないと思う。ただ、ほかに分かりやすい本があるかもしれないので、この本を特別に勧めようとは思わない。

    というか、抽象的な思考が好きなごくごく一部の人間以外にはまったく無用の書であることを断っておく。

    (最終更新日: 2006年11月4日 by ひっちぃ)

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