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    エンターブレイン

    駄作(-30点)
    2006年10月15日
    ひっちぃ

    500年間戦い続けている二つの王国の均衡が破れ、ベルウィック同盟を結成している諸侯をまとめるヴェリア王国が崩壊の危機に陥った中で、諸侯の一公子である主人公リースが不遇な扱いを受けながらも頭角をあらわして、裏でうごめく闇の教団などとも戦って戦争を収めようとする物語を扱ったシミュレーションRPG。

    このタイプのゲームの先祖である任天堂のファイアーエムブレムシリーズと共通点が多いが、それもそのはず同シリーズの熱心なファンであるファミ通の編集長だった浜村弘一という人が協力して、同シリーズのディレクターの加賀昭三という人が独立して作ったらしい。任天堂から訴訟を起こされ、結局ティアリングサーガシリーズと改題され、本作はその二作目である。

    私はティアリングサーガ初代をやったことがないので、ファイアーエムブレムシリーズとの比較を前提に解説と評価をすることにする。

    まずストーリーが良い。辺境の一諸侯の跡取り息子という設定の主人公が、暗愚な王と家臣たちに冷遇されている中で、数少ない理解者であるロズオーク公爵らの庇護でどうにかやっていく。苦戦中の友軍や弱い町人を王らが切り捨てる中で、主人公がひたむきに助け、支持を集めていく。

    音楽は非常に良い。メインテーマをモチーフにいくつかの情感にあふれる編曲があり、全般的に豊かで奥行きのあるオーケストラ風の音楽が常に流れている。グラフィックは王道なオタ系の中に独自さがあって完成度が高い。

    ただ、正直ウォードのグラフィックを見て最初萎えた。クラス(兵種)がオールドナイトっていうネーミングの安直さもあり、最初からちょっとやる気が失せた。しかしストーリーが進んでくると、このおっさんがいい味を出してきて面白くなってくる。

    システムは同時ターン制をとっており、敵と味方とがユニット数に応じて基本的に一キャラずつ動かしていく。従来のシリーズではターン交代と共にいっせいに敵が襲ってきて、それにより味方が集中攻撃されて死んでやりなおしになることが多かったが、同時ターン制によりすぐさま味方を回復させることでフォローが利くようになった。

    しかし残念ながら同時ターン制には大きな欠点があった。ターン終了時に二つ以上の味方ユニットが瀕死になると、片方助けてももう片方は必ず死んでしまう。

    味方が死ぬと生き返らない。主人公クラスや特定ユニットが死ぬと即ゲームオーバーとなるほか、主力級が死んでも痛いのでリセットせざるをえない。さらに脇役でも死ぬとのちのちの展開やエンディングに影響するので、実質ほぼ全員を生存させなければならない。

    戦闘中は5ターンごとにしかセーブできない。セーブ前にちょっとしたミスをすると泣く泣くリセットし、十数分から数十分のプレイが無駄になる。セーブ可能なターンを見越して戦うことが戦術となっているゲームなんて楽しいのだろうか。

    一つのマップに出撃できる味方の数が制限されている。特定の味方ユニットを出撃させて何かすることでイベントが発生することがあるので、それらのイベントをどうしても見たければ攻略サイトの世話になる必要がある。しかもイベントの条件が厳しいことがあり、普通にプレイしただけではロクにイベントを見ることが出来ない。

    強いキャラクターだけで攻略を進めていくと息が切れてくるので、弱いキャラクターを育てながらやる必要がある。わざわざ強いキャラクターで敵を半死半生にしてから弱いキャラクターでとどめをささせて経験値を得させて成長させる。弱いキャラクターはちょっと気を抜くとすぐ死んでしまう。せっかくレベルアップさせても、成長がランダムなのでほとんど成長しないこともあり、攻略サイトによってはリセットを勧めている。弱いキャラクターを成長させて強くするのは楽しいが、攻略の難易度も上げてしまうのでバランスに苦慮する。そうして苦労して育ててきたキャラクターが、いくら成長させてもあまり強くならなかったり、途中加入の強力なユニットのせいで二軍落ちしたりする。

    索敵の要素があるマップがあり、限られた視界の外から急に強力なユニットが出てきて、あっというまに味方を殺されたりする。

    私が本作をやるにあたって一番心配していたマゾゲーの疑いは最終的に当たってしまった。何度もリセットしてやりなおせる真のゲーマーのみがこのゲームを楽しむことが出来る。とてもこのゲームを普通の人に紹介することが出来ない。それどころかプレイしないよう勧めたいぐらいだ。

    暗黒教団というモチーフはファイアーエムブレムシリーズから引き継がれたものだが、せっかくの政略劇が安易なヒーローものになってしまう。政略劇のほうも、これでもかこれでもかと王国に不利なことが起き、なかなか再興の兆しが見えない。見えたかと思ったら安易な血族で収集させようといういやらしさがもたげてきた。それでも私は先の展開をまだ楽しみにしていた。しかし、あまりの難しさについにやる気がなくなってきてしまった。

    ここに至るまで私はこのゲームに80時間近く使っており、もちろんこれはリセットして失われた時間を含まないので既に百時間はこのゲームに費やしているのだが、攻略サイトによればまだ四つのステージを残している。

    私は弱いユニットを成長させるのが好きなので、序盤から大分気を使って弱いユニットを成長させるよう努力してきた。しかし、ここまで努力してもどうやらほとんど報われていないようだった。つまり、私がしてきたぐらいの努力はこのゲームでは当然だというゲームバランスなのだろう。普通にプレイする人だったら早々に行き詰って終わるに違いない。

    キャラクターの成長はレベルだけでなくスキルも必要となる。一定のレベルとスキルを満たすとキャラクターがクラスチェンジしてひとまわり強くなるのだが、スキルが条件だとさらに武器を振り回さなければならなくなる。武器を使いすぎると消耗してどんどん壊れていくので金が必要になる。敵をわざと戦闘不能にして敵をアイテムと共に捕獲する攻略法があるのだが、攻略サイトではそれを前提に書かれているものがある。賞金首や良いアイテムを落とす敵を倒すには攻略に無理を掛けなければならない。リスクが高く、失敗すると当然リセットとなる。

    このゲームはシステムを根本的に見直す必要がある。見直す方法はいくつか考えられるが、私の案としてはまずHPが0になっても即死亡にならないようにすべきだ。そもそもユニットを一つも欠けることなく攻略が可能なストラテジーゲームなんて何を目指したいのか分からない。HPが0になったらそのステージではもう使えないとか、さらにとどめをさされたら本当に死ぬとかにすべきだ。一つのユニットが集中攻撃されないようシステム的な制限を設けるのも良いと思う。

    主要なイベントぐらい全部見せるべきだ。上手いプレイヤーだけが観れるイベントというのは用意したほうが面白いが、本当にマニア心をくすぐるぐらいで十分だと思う。

    ゲームバランスとしては、一度プレイした以上どんなプレイヤーでも時間をかければクリアできるぐらいにした上で初めて、上手にプレイした人にそれなりのご褒美として何か与えることを考えるべきではないか。

    このシリーズの熱心なファンがどういうプレイをしてどういう楽しみ方をしているのか私は知っているつもりだが、彼らを満足させた上でゲームバランスを調整して間口を広くすることは非常に簡単なことだと思う。これだけシリーズを作ってきてどうしてそれが出来ないのか不思議だ。若者のゲーム離れが起きていることと結びつけるのはさすがに安易だからしたくないが、こんなにストレスを感じるゲームは私がプレイしてきた中で他にない。

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