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    古谷 実

    最高(50点)
    2005年8月6日
    ひっちぃ

    高校生でいじめられっこの主人公が、ひょんなきっかけでかわいい彼女を得るが、悶々とした日々を送る、きわめて文学的な作品。

    作者は古谷実。私の大好きな作家の一人。この人の作品は、真実をえぐりとろうとする深い深い創作である。

    今回は、17歳の何の取り得もないどころかいじめられっこの男子高校生を主人公にしている。当然異性との付き合いはない。自分にまったく自信がない。そんな状況から、いかに少年が変わっていくのかというところを、丁寧にネチネチと少年の心理描写で描いて見せている。

    正直私は、主人公がかわいい彼女と付き合うのはあくまで読者サービスで、物語の本筋は別のところにあるのかと思っていた。まさかこっちが本筋だとは。最終話付近で主人公がつぶやく一言が、この作品のすべてを表している。

    どんな人間にもドラマがある。若い人には、冴えない中年親父や性格悪そうなおばさんにも結婚相手がいることを不思議に思ったことはないだろうか。翻って自分が異性を見る目はどうだろうか。時と共に人の精神は変わって行く。

    私が高校時代にいた部が、大人になってから同窓会を開いたときに、同学年だった女性がこんなことをつぶやいた。「若返って中高生をやりなおしたいとは思わないな。あの頃はどうでもいいことにいちいち悩んでいた。」

    この作品を一言で言えば「青春」なのだが、とことん薄っぺらくなったこの言葉を当てはめるような小さな作品ではない。

    好きな異性に声を掛けるのに勇気を振り絞っているうちが青春真っ只中で、気楽に会話するようになったときに青春は終わってしまうのだ。

    ちなみに私はまだ青春真っ盛りなのでよろしく(笑)。

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