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    望月 重 (文春新書)

    まあまあ(10点)
    2005年1月27日
    ひっちぃ

    理科系の中でも何故かファッショナブルなイメージがあって人気の建築家を、裏で支える人々がいる。そんな構造設計者と呼ばれる人々の仕事を、高校物理程度の知識を使って簡単に説明した本。

    建築家っていうのは要するに芸術家みたいなもので、実際はあんまり建物の耐久度とかを一生懸命考えたりするような人ではないらしい。建築家がデザインに凝っても大丈夫なように、構造設計者が無理を聞きつつも耐震なんかを考えて主張し、衝突と妥協を通じて優れた建物が出来るのだという。

    だが片やスポットライトを浴びるのに対し、片やまったくの日陰者。9・11で倒壊したワールドトレーディングセンターの竣工式のとき、日系人の建築家は呼ばれたが、構造を設計した著者の知人は呼ばれなかったのだそうだ。

    本書の多くの部分は、物理の考え方や式を使った説明に費やされている。高校程度の物理で分かるとはいえ、真面目に勉強していた人でないと分からなくなりそうだ。私は現役から退いて長いせいかギリギリ感があった。このあたりを理解できない人には、本書の魅力は半減だ。読む人を選ぶといえよう。

    割と基礎的な物理で説明しているので、建築という技術がどのように物理学に根ざしているのかという点では非常に分かりやすいのだが、原理的な理解をさせることを狙ったせいか、高層ビルのような桁外れに重いビルにまでは言及していない。基本は同じなのだろうが、それだったら積み木でだっていいのだから、もっと量を実感できるすごい計算式が欲しかった。東京タワーの先端が史上最大の台風クラスの風速で何十センチ傾くとかいう話もあったが、結果だけサラリと書かれてあるので大したことのないかのように聞こえてしまう。

    ただ、この本によって世の中を見る目が少しは変わるというのは確かである。

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