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    高橋ツトム

    まあまあ(10点)
    2003年9月27日
    ひっちぃ

    不幸な死に方をした人が、天国と地獄の分かれ道にいるイズコという番人と会い、このまま天国へ行くか、地獄に行くことになろうと現世の誰か一人を呪い殺すかを選択していく連作。

    テレビ朝日でドラマ化され、釈由美子がイズコを演じて話題になった。私はそのドラマを見たことはないが、ドラマがなければこの作品を知ることは無かっただろうとおもう。

    おどろおどろしい表紙に、扱っている内容を伝え聞き、どんな怨憎が描かれるのだろうかと期待して読み始めたが、大した話ではなかった。この作品のいいところは、殺人の被害者に語らせるという虚構この一点に限る。作者の画力も十分で、怨念を具象化したかのような復讐の描写にはとても迫力を感じた。だが、描かれる内容が割と薄っぺらいものに感じてならなかった。

    イズコという番人は、死者のモノローグを引き出すためだけに必要な人格であり、ただただミステリアスな存在だ。たまに、彼女の個性のようなものも描かれるが、それがまた中途半端というか意味不明で、作者の倫理観を押し付けられているようにしか感じられなかった。

    単純なカタルシスもの、つまり殺されたから殺し返す、で良かったと思う。無残に殺される被害者。のうのうと笑いながら生きる殺人犯。アイデアは尽きないだろう。無残であればあるほど読者は興奮し、復讐が行われれば胸がスカッとする。これだけで二つの味がある。

    私にとってうれしかったのは、激昂して殺してしまったあとで真実に触れて大変な後悔をする殺人者、これを描写してくれたことだ。私はこの手の作品に弱い。この作品が他の作品と違うのは、大変な後悔をしている殺人者に対して、被害者はどのように思うのか、ということが描写できる点にある。しかしこの点においてはいまいちな感じがした。確かに扱いは難しいだろうが、なんとか描ききってほしかった。

    復讐するかしないかという選択を設けたことで、この作品の奥行きが広がっているのは面白いのだが、少なくとも私が読んだ一巻ではまだまだ描ききれているとは言いがたい感じがした。人はどんなときに他人を許せるのか、という深淵に気安く近づきすぎたのではないかと思う。

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