


アラフォー男の異世界通販生活 コミカライズ版
原作: 朝倉一二三, キャラクター原案: やまかわ, 作画: うみハル
まあまあ(10点)
2025年3月3日
フリーランスでイラストレーターをしていたアラフォー独身男ケンイチは、突如ファンタジー風の異世界に転移したが、この世界を救えだのと神様から言われることもなく、なぜか身に付いたネット通販サイトの能力(?)を使い、かねてからの望みであったスローライフを送ろうとする。小説投稿サイトに書かれた作品が原作のコミカライズ版。
2025年にアニメ化されたのを見て、そういえば以前コミカライズ版をちょっと読んだことあったなと思いつつ、すっかり内容を忘れていたので初見のようにしばらく視聴を続けていたのだけど、なんかヒロインたちが主人公ケンイチにタカり続けているのを見てちょっとうんざりしてしまった。それにファンタジー世界で現代の通販サイトを使えるという特殊能力の使い方にもあまりワクワクしなかったので、途中で見るのをやめてしまった。でもやっぱり気になったのでもう一度最初からこのコミカライズ版を読み返してみたらおもしろかった。
主人公のケンイチはイラストレーターなんだけど、作中では本当にちょろっと絵本を書いたぐらいだった。こいつはとにかくスローライフがしたいだけの男だと思っていい。フリーランスだったらやりたければすでに好きなだけスローライフ送っているやろがいと思ったけど。
現代の商品をファンタジー風の異世界に持ち込めるというのは異世界ものの大きなウリの一つなので珍しくもないのだけど、この作品の特徴はそれがネット通販に限定されていることだと思う。通販サイトではなんでも扱っているわけじゃないので制約があり、それを工夫でなんとかしていくのが楽しかった。森でオオカミの群れに襲われたときにどうするか?武器になるものは?追い払うには?と知恵を絞って試行錯誤していく。
際限なく商品を注文できるわけではなくて、通販サイトで使える通貨を得るためにはこの世界のなにか金目のものを画面に入れる必要があった。換金価値はあくまで現代の価値観で決まるため、異世界との価値の違いを考えてやりくりすることになる。
最初はとにかくお金がないので、異世界で需要がありそうで、かつあまりこの世界にとって影響力のなさそうなものをひっそりと売っていこうとする。最初に試みたのは誰でも思いつく香辛料だったけど、シンジケートが独占しているので扱うのは危険だとのこと。他にも国の専売制になっていて普通の商人には扱えないものもあって知恵を絞る必要があった。
いきなり店を持つこともできないので、許可を得て露天を出すことになる。そこで同業者と知り合っていろいろとこの世界の情報を得たり、ケンイチの扱っている品物に引きつけられて様々なお客さんがやってくる。彼らの願いをかなえてあげるうちにどんどんケンイチの世界が広がっていく。
通販サイトの画面に放り込んだものはこの世界から消えてしまうので、使いすぎるとこの世界からどんどんこの世界のモノがなくなってしまう。さすがにそれはまずいということで、むやみに使わないようにしている。それが無節操な無双を防いでいてよかった。
なんと車とか重機(工事現場とかで使う特殊車両)まで通販サイトで手に入ってしまう。なんかよくわからないけれど主人公ケンイチは重機が好きみたいで、重機に乗って暴れまわるときに妙なポエムを毎度口にするのがウケた。
以前同僚がプロジェクトのデスマーチ中(計画が破綻して赤字をたれながしながらひたすらみんな超過勤務を続けている状態のこと)にちょっと頭のネジが緩んで気晴らしに冗談でネットオークションで格安の中古車を買ったと言っていたのを思い出した。すぐに処分したらしいけど。
ヒロインはというと、まず宿屋の従業員アザレアと仲良くなるけれど、こいつはあまり出番がなかった。次に猫の獣人女ミャレーがなついてくるけど、獣人のためかケンイチの中では一線を引いている感じ?体毛がふっさりしているタイプの獣人だった。そしてケンイチの商売に引きつけられて商人の娘プリムラが現れるほか、盗賊団にさらわれていた小さい女の子アネモネを引き取る。
この商人の娘プリムラと女の子アネモネがアニメ見てたら妙にケンイチにタカっているように見えてしょうがなかった。プリムラはケンイチの仕入れてくる商品や食べ物に魅せられて露骨に誘惑してくるようになるし、アネモネはちょうど同じぐらいの年頃の娘を失っている女露天商のおばさんに引き取られるのかと思いきやこれまたケンイチの与えてくれる食べ物に引かれてケンイチについていこうとする。なんか特にアニメの表現や演出が濃厚?だったせいでそう見えたのかも。二人はケンイチに実質命を救われているわけだし、惚れるのも無理はないと思うんだけど、なんかそれをそれと感じない何かがあった。
正直盗賊団との戦いもなんだか安易すぎて萎えた。五十人ぐらいいる盗賊団の本拠地に、たった十人ちょっとで乗り込んでいく。よくもまあ誰も死ななかったし大きなケガもしなかったものだと思う。ちょっと仲良くなった程度の女のためにそこまで無謀な戦いをしかけられるものだろうか。それに小型の重機で盗賊相手に戦闘できるんだろうか。すぐに運転席に取りつかれてやられそうな気がする。まあ異世界の人間にとって重機は不気味にうつるのかもしれないけど。
このあたりのちょっと首を傾げる展開を乗り越えると、普通に楽しめるようになってきた。あいかわらず雑ではあるのだけど、そこがお気楽異世界ファンタジーのいいところで、この世界の人々を驚かせ喜ばせるケンイチの活躍が描かれていく。ケンイチ自身の能力は成長しないんだけど。ダンジョン探索や強敵との戦いもたまにある程度だった。
商人の娘プリムラはその後、ケンイチの助けも借りながら自分で商売を始め、人を使って事業を拡大するなど商才を発揮する。また、小さな女の子アネモネも、ケンイチが魔法書を手に入れたのを気に魔法に目覚め、少しずつ勉強していって魔力を高めていく。
ヒロインもさらに増え、プリムラの護衛として女獣人ニャメナというちょっとスレた感じの女を雇ったり、まあその後も貴族方面でどんどんケンイチのもとに集まってくる。さすがにだんだん安易な感じがしてきたのだけど、お気楽異世界ファンタジーとして普通に楽しめた。
男キャラは、ケンイチに剣を仕入れてほしいと言ってくるノースポール騎士爵が、盗賊団との戦いにも名乗りを上げるし主要キャラとなっていくと思いきや、その後あっさりと退場してしまった。元役人でアネモネと同年代の娘がいる男もゲストキャラだった。まあこの作品は典型的なハーレムものなんだと思う。一方でプリムラの父マロウ氏は、プリムラとの関係が続くのでずっと地味に活躍し続ける。導入部では老女アナマみたいな年配女性キャラとも仲良くなる。
絵は見やすくてそれなりに魅力的だった。でも自分は絵が目当てでこの作品を見るほどではない感じ。獣人女たちがちゃんと獣人っぽくかわいくて、ある種の人の癖に刺さりそうな気がする。
このコミカライズ版は、原作がまだまだ続く中で全8巻で完結する。打ち切りというわけではなさそうで、それなりにいい区切りがついていると思う。この先の物語を読むには原作小説しかないのだけど、とりあえずいったんもういいかなと思った。でもいずれ読んでみたい気持ちもある。
冒険者じゃなくて商人(?)として活躍する異世界転移ファンタジーを楽しめそうならこの作品を読んでみるといいと思う。
2025年にアニメ化されたのを見て、そういえば以前コミカライズ版をちょっと読んだことあったなと思いつつ、すっかり内容を忘れていたので初見のようにしばらく視聴を続けていたのだけど、なんかヒロインたちが主人公ケンイチにタカり続けているのを見てちょっとうんざりしてしまった。それにファンタジー世界で現代の通販サイトを使えるという特殊能力の使い方にもあまりワクワクしなかったので、途中で見るのをやめてしまった。でもやっぱり気になったのでもう一度最初からこのコミカライズ版を読み返してみたらおもしろかった。
主人公のケンイチはイラストレーターなんだけど、作中では本当にちょろっと絵本を書いたぐらいだった。こいつはとにかくスローライフがしたいだけの男だと思っていい。フリーランスだったらやりたければすでに好きなだけスローライフ送っているやろがいと思ったけど。
現代の商品をファンタジー風の異世界に持ち込めるというのは異世界ものの大きなウリの一つなので珍しくもないのだけど、この作品の特徴はそれがネット通販に限定されていることだと思う。通販サイトではなんでも扱っているわけじゃないので制約があり、それを工夫でなんとかしていくのが楽しかった。森でオオカミの群れに襲われたときにどうするか?武器になるものは?追い払うには?と知恵を絞って試行錯誤していく。
際限なく商品を注文できるわけではなくて、通販サイトで使える通貨を得るためにはこの世界のなにか金目のものを画面に入れる必要があった。換金価値はあくまで現代の価値観で決まるため、異世界との価値の違いを考えてやりくりすることになる。
最初はとにかくお金がないので、異世界で需要がありそうで、かつあまりこの世界にとって影響力のなさそうなものをひっそりと売っていこうとする。最初に試みたのは誰でも思いつく香辛料だったけど、シンジケートが独占しているので扱うのは危険だとのこと。他にも国の専売制になっていて普通の商人には扱えないものもあって知恵を絞る必要があった。
いきなり店を持つこともできないので、許可を得て露天を出すことになる。そこで同業者と知り合っていろいろとこの世界の情報を得たり、ケンイチの扱っている品物に引きつけられて様々なお客さんがやってくる。彼らの願いをかなえてあげるうちにどんどんケンイチの世界が広がっていく。
通販サイトの画面に放り込んだものはこの世界から消えてしまうので、使いすぎるとこの世界からどんどんこの世界のモノがなくなってしまう。さすがにそれはまずいということで、むやみに使わないようにしている。それが無節操な無双を防いでいてよかった。
なんと車とか重機(工事現場とかで使う特殊車両)まで通販サイトで手に入ってしまう。なんかよくわからないけれど主人公ケンイチは重機が好きみたいで、重機に乗って暴れまわるときに妙なポエムを毎度口にするのがウケた。
以前同僚がプロジェクトのデスマーチ中(計画が破綻して赤字をたれながしながらひたすらみんな超過勤務を続けている状態のこと)にちょっと頭のネジが緩んで気晴らしに冗談でネットオークションで格安の中古車を買ったと言っていたのを思い出した。すぐに処分したらしいけど。
ヒロインはというと、まず宿屋の従業員アザレアと仲良くなるけれど、こいつはあまり出番がなかった。次に猫の獣人女ミャレーがなついてくるけど、獣人のためかケンイチの中では一線を引いている感じ?体毛がふっさりしているタイプの獣人だった。そしてケンイチの商売に引きつけられて商人の娘プリムラが現れるほか、盗賊団にさらわれていた小さい女の子アネモネを引き取る。
この商人の娘プリムラと女の子アネモネがアニメ見てたら妙にケンイチにタカっているように見えてしょうがなかった。プリムラはケンイチの仕入れてくる商品や食べ物に魅せられて露骨に誘惑してくるようになるし、アネモネはちょうど同じぐらいの年頃の娘を失っている女露天商のおばさんに引き取られるのかと思いきやこれまたケンイチの与えてくれる食べ物に引かれてケンイチについていこうとする。なんか特にアニメの表現や演出が濃厚?だったせいでそう見えたのかも。二人はケンイチに実質命を救われているわけだし、惚れるのも無理はないと思うんだけど、なんかそれをそれと感じない何かがあった。
正直盗賊団との戦いもなんだか安易すぎて萎えた。五十人ぐらいいる盗賊団の本拠地に、たった十人ちょっとで乗り込んでいく。よくもまあ誰も死ななかったし大きなケガもしなかったものだと思う。ちょっと仲良くなった程度の女のためにそこまで無謀な戦いをしかけられるものだろうか。それに小型の重機で盗賊相手に戦闘できるんだろうか。すぐに運転席に取りつかれてやられそうな気がする。まあ異世界の人間にとって重機は不気味にうつるのかもしれないけど。
このあたりのちょっと首を傾げる展開を乗り越えると、普通に楽しめるようになってきた。あいかわらず雑ではあるのだけど、そこがお気楽異世界ファンタジーのいいところで、この世界の人々を驚かせ喜ばせるケンイチの活躍が描かれていく。ケンイチ自身の能力は成長しないんだけど。ダンジョン探索や強敵との戦いもたまにある程度だった。
商人の娘プリムラはその後、ケンイチの助けも借りながら自分で商売を始め、人を使って事業を拡大するなど商才を発揮する。また、小さな女の子アネモネも、ケンイチが魔法書を手に入れたのを気に魔法に目覚め、少しずつ勉強していって魔力を高めていく。
ヒロインもさらに増え、プリムラの護衛として女獣人ニャメナというちょっとスレた感じの女を雇ったり、まあその後も貴族方面でどんどんケンイチのもとに集まってくる。さすがにだんだん安易な感じがしてきたのだけど、お気楽異世界ファンタジーとして普通に楽しめた。
男キャラは、ケンイチに剣を仕入れてほしいと言ってくるノースポール騎士爵が、盗賊団との戦いにも名乗りを上げるし主要キャラとなっていくと思いきや、その後あっさりと退場してしまった。元役人でアネモネと同年代の娘がいる男もゲストキャラだった。まあこの作品は典型的なハーレムものなんだと思う。一方でプリムラの父マロウ氏は、プリムラとの関係が続くのでずっと地味に活躍し続ける。導入部では老女アナマみたいな年配女性キャラとも仲良くなる。
絵は見やすくてそれなりに魅力的だった。でも自分は絵が目当てでこの作品を見るほどではない感じ。獣人女たちがちゃんと獣人っぽくかわいくて、ある種の人の癖に刺さりそうな気がする。
このコミカライズ版は、原作がまだまだ続く中で全8巻で完結する。打ち切りというわけではなさそうで、それなりにいい区切りがついていると思う。この先の物語を読むには原作小説しかないのだけど、とりあえずいったんもういいかなと思った。でもいずれ読んでみたい気持ちもある。
冒険者じゃなくて商人(?)として活躍する異世界転移ファンタジーを楽しめそうならこの作品を読んでみるといいと思う。
[参考]
https://
magazine.jp.square-enix.com/gfantasy/story/
arafo_isekaitsuhan/