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METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES チコ救出まで

ディレクター他:小島秀夫 販売:コナミ

いまいち(-10点)
2022年7月12日
ひっちぃ

「国境なき軍隊」を率いるビッグ・ボスことコードネーム「スネーク」は、ダブルスパイと言われていた少女「パス」がアメリカ海兵隊のメキシコ内の基地に囚われて尋問を受けていることを掴み、その身柄を確保するため基地へと潜入する。世界的な評価を受けている小島監督がコナミから独立する前に制作した潜入型アクションゲームシリーズの完結作の前章。

いずれこのシリーズやってみたいと思っていたら、2021年のSteamのウィンターセールで本編とセットで千円ちょっとで投げ売りされていたので拾っておいた。海外でも通用する日本発のAAAタイトル(定義はよく分からないけれど開発費が数十億円以上で数百万本以上売り上げるフルプライスのゲームのことだと思う)なのに自分はいままでプレイしたことがなかったので、このタイミングで少し遊んでみることにした。すぐにやる気がなくなった。

嵐の夜に海岸沿いの基地付近に上陸するところからゲームは始まる(その前に長大なオープニングムービーを見せられる)。まずは双眼鏡の使い方からチュートリアルが行われる。ズームが三段階あってある程度遠くの敵も視認できるほか、指向性のマイクもついていて敵同士の会話なんかも聞くことができる。また、視認した敵には自動的にマーカーがつき、以後視界が遮られても位置が分かるようになる。

スニーキングつまり敵に見つからないように進むゲームだということは分かっていたので、無線で送られてくる指示に従ってかがんで歩いていく。すぐそこに監視哨があってサーチライトを振っているので、照らされないように進んでいこうとするのだけど、どこを照らしているのか分かりにくくていきなり見つかる(笑)。

ワラワラとやってくる敵兵。敵の無線を常に傍受しているので、敵がこっちを発見して増援を呼ぶ様子が入ってきておもしろかった。緊迫感のあるBGMが緊張感を高める。こっちも反撃して一人二人倒すのだけど多勢に無勢でやられてしまった。

最近のゲームはどれもAIが進化していて敵の動きがよかった。敵兵は基本的に二人一組で行動しているので、たとえば一人をヘッドショット(頭を撃つ)で即死させてもそれを見られたら応援を呼ばれてしまう。だから、一人で行動しているやつを撃つか、相方がよそ見したり他に注意を奪われているときに一人やり、それが見つからないうちにもう一人をやらなければならない。また、倒したところが目立つ場所だったら他の敵が巡回してくる可能性があるため、倒した敵兵を目立たない場所へ運ぶ必要もでてくる。

マップを表示させることができて、目標地点が示されているのでわかりやすい。最初の目標はダブルスパイの少女パスを救出するために先行して潜入して捕まった少年兵チコを救出すること。チコが囚われていると思われる屋外の監獄エリアまで行かなければならない。

監獄エリアはフェンスで囲まれていて、最初どこから入るのか分からなかった。扉っぽい部分があるので開けて入ることができる。さすがに扉にはマーカーみたいなものがつかないので目で見て判断するしかない。

で、なんだかんだでチコを救出してヘリを呼んで回収してもらい、次は少女パスだというところでプレイを中断した。というか中断ではなくプレイ終了になる可能性が高いと思う。

少女パスがどこに囚われているのか分からず、ヒントとしてテープレコーダーに録音された音声を聞いて探す必要があるのだけど、聞いても漠然としていてよく分からなかった。そこでYouTubeに上がっていたプレイ動画を見ながら聞き直したところ、どうやら基地内に監視カメラが厳重にあるところがあって、その奥へ行けばいいということが分かるようだった。ここまで分かったところで、結局自分はそこに楽しみを見出すことができなかった。

任天度「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」にもゲルドの砦に潜入するミッションがあるのだけど、やっぱり自分は良くないストレスを感じてあまり楽しめなかった。なぜなのか改めて考えてみると、取り返しのつかない失敗が即ゲームオーバーにつながるからだと思う。

それに対して、インスムニアック・ゲームズ「スパイダーマン」の場合、潜入がうまくいくと敵に気づかれる前に敵の数を減らせるけれど、早々に見つかってもいくらでも挽回できた。あと、こっそり敵に近づくという地味な作業が必要なくて、糸を出して瞬時に移動して敵を倒せるのもよかった。

このゲームの場合、自分がよく参考にする「ゲームカタログ」というサイトに寄せられた声によれば、敵に見つかりやすい一方で、見つかっても隠れ続けるなどしてリカバリーしやすいらしい。あと最悪増援も含めてすべての敵を倒してしまえばいいというのもある(笑)。まあその点はちゃんと考えられていて、なるべく敵を倒さないほうがスコアも上がるようだった。

プレイ動画を見たところ、わざと敵に見つかって誘ってから回り込んで後ろから敵を倒すという手もあった。敵のAIをあざむくということに快感を得られるのであれば気持ちいいんだろうなと思う。自分はどこか「しょせんAIだろ」「そういう造りになっているだけ」みたいに思ってしまった。

この作品、最初に書いたとおり、あくまで本編の前章にあたる短いエピソードだけを扱っている。ネットでは有料の体験版だと揶揄されていた。少年兵チコと少女パスを救出したら終わってしまうらしい。自分がYouTubeで見た動画はイベントをまったくスキップしていなかったけれど一時間もしないで長いエンディングロールまで終わっていた。実質的なプレイ時間は三十分ぐらいかも。

でもどうやらクリアするだけが楽しみではないらしい。隠しも含めて6つのサブミッションがあり、しっかり遊ぶと二十数時間程度のボリュームはあるようだった。マップは基地一つ分なのでそんなに広くないのだけど、色々な遊び方ができるように工夫されているらしい。制作側はオープンワールドのゲームだと称しており、広くないながらもシームレスにマップを駆け回れる。ただし、薄いフェンスを車でぶち破れなかったという稚拙な再現度への批判もあった。

シリーズをずっと遊び続けてきた人にとっては心得たものみたいで、今回の新機軸である双眼鏡によるマーカー付けだけ案内されればあとは十分なのだろう。自分は初めてだったので、プレイ動画で後ろからこっそり近づいて敵を降伏させたり、脅して情報を聞き出したり、そのあとナイフでブッスリ殺してしまったり(!)、トラックの荷台に忍び込んで移動したり、色々と出来ることを知って驚くと同時に「もういいや」という気分になった。なんというかフェアじゃないと思う。

それになんだか自分でやってみたいという気が起きないゲームだった。RPGだったら「さあダンジョンを攻略するぞ」という気になるし、TPSでも「アンチャーテッド」みたいに遺跡を探検するぞという気になるのだけど、このゲームでさあ軍事施設に潜入するぞという気にはならなかった。

少年兵チコが囚われている場所の前に見張りがいるのだけど、最初プレイしたときにどうしたらいいのか分からなかった。しばらく物陰に潜んで敵の動きを観察していたのだけど、悩んだ挙句相手が一人だけだったので撃ち殺した。そのあとフェンスの入口を探してうろつきまわっているうちに死体をそのままにしていたのが見つかって敵を呼ばれたので隠れてやりすごした。ここまでは、「孤立している敵は即死させれば大丈夫」「でも死体をそのままにしてはダメ」「警戒レベルが上がったらしばらく隠れてやりすごす」という気づきがあってまだゲームしている感じがした。

でもチコを救出したあとで今度は歩哨に敵が二人復活していたので、こいつらをどうしたらいいのか悩み、結局戦闘で強引に倒したのだけどまた増援を呼ばれた。ここでは何が正解なのかよくわからなかった。まあ一応切り抜けたのだからこれも正解の一つなんだし、自由度が高いからこそ色んなプレイができるわけなのだけど、この先これではやっていけないだろうなと思った。どういう手があったのか知りたかった。いま考えると、一人がよそ見しているときにもう一人を倒し、そのあとすぐに残りを始末すればよかっただけだったのかもしれない。

ムービーによる演出は既存の映画の焼き直しでしかないように思えた。CGはとてもリアルで美しかったのだけど、映画を再現しているだけだった。ムービーでの音楽の使われ方がとてもダサく感じた。殺伐としたシーンのあとでまったく逆の曲を流すという狙いがあざとすぎる。特にエンディングのスタンダードナンバーもどき(?)の曲にはしらけた。「人間爆弾」も普通に意味不明だった。この人の作品から感動が得られるとはとても思えなかった。正直この人の演出は映画のものまね師としてもてはやされているだけなんじゃないかと思った。

本編のほうがいくらか内容が親切なのかもしれないのだけど、小島監督の独立騒動の中で強引に仕上げられたせいで打ち切り作品のような最後になっているとネットで言われており、やる気が起きない。どうせやるならシリーズ中もっとも評判のいい作品から始めたいと思った。でもせっかく買ったことだし、いずれやってみるかもしれない(千円ちょっとなので放置してもいいんだけど)。

というかどう考えても、この前章をやってから本編をやるという構成には問題があると思う。ボリューム的にこの前章には十分なチュートリアルが入ってないので初心者にはどんなゲームか分かりづらいし、この前章があって本編の話が始まるので本編を先にやりづらい。このシリーズに慣れ親しんだユーザーにもたれかかりすぎていると思う。長いオープニングムービーの最後に主人公「スネーク」が意味もなくスコープを外して画面の向こう側にいるであろうプレイヤーに向かって(?)「待たせたな」と言うなんてまさにそれを如実に表している。

まあでも少なくともグラフィックスは非常に美しく、UIや操作方法も洗練されており、このシリーズがどんな作品なのかよく分かったという意味ではやってよかったと思う。ただ、本腰を入れてこのシリーズを遊んでみたいという人であれば、ちゃんと評判のいい作品を選んで一本きっちり遊んだほうがいいんじゃないかと思った。

[参考]
https://www.konami.com/mg/mgs5/
gz/jp/
index.php

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