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17才の帝国

原作:吉田玲子 制作:NHK (NHK総合 2022.5.7~)

いまいち(-10点)
2022年6月17日
ひっちぃ

約十年後の没落した日本の空想近未来、AIのサポートにより地方都市を治める実験が行われることになり、初代総理大臣に17歳の若者が選ばれる。全5回のテレビドラマ。

ちょっとおもしろそうな話だったので見てみた。第1回がおもしろかったので全部見てみたのだけど、その後はさっぱりおもしろくなかった。

なぜこの題なのかというと、この実験プロジェクトでAIによって実験都市の総理に選ばれたのがわずか17歳の少年だから。AIが全市民の中から選ぶのではなく、日本全国から立候補を募った上で、AIが総理を始めとした閣僚を選ぶ。

主人公は女子高生の芥川サチで、総理に選ばれた真木亜蘭とは政治系のオンラインサロンで知り合いだったことから、補佐官になってくれと言われてやることになる。

AIがどうのこうのというよりもまずネットによる直接民主制が可能になった点に興味をひかれた。第1回がおもしろかったと言ったのは、総理の真木くんが最後に市議会を廃止してしまったこと。あわてふためく市議会議員たち。このシーンが自分の中でこのドラマのマックスだった。

あらゆる議題はネットですぐに議決できるのだから代議士なんていらない。まあ議員の役割は議決だけじゃないけど、政策論議はSNSでできるし、政策の提言だって可能。まあそれで収集がつくのかって話なんだけど、この作品では閣僚が政策を考えて市民はそれに対して意見を言うだけ。

第2回で再開発計画を見直そうとする。業者と癒着していた市議会議員たちが反対するのは当然として、商店街の中にも反対者がいることを知り、総理の真木くんが現地で聞き取り調査をして意見をくみ取って計画を修正する。こういうのはネットではできないことらしい。なんで?

第3回で公務員を削減する。主人公の女子高生サチの母親も学校の先生だったのでリストラの対象になり、サチが自分の特権を使ってなんとかしようとするのがウケた。

第4~5回で総理の真木くんの闇みたいな話になる。それと絡めて日本の総理の第一秘書がかつて家族ごと事故死した事件を追う話がクロスオーバーしてきて、訳の分からないうちに物語が終わる。

最後のまとめかたを見ると、17才という年齢は不安定な時なのだから政治家には向いていない、それなのになぜAIは彼を選んだのか?みたいな謎かけで終わっていて、なにが言いたいのかよく分からなかった。

第2~3回でなぜもっと既得権益者たる政治家や公務員に切り込まなかったんだろうか。でもって第4~5話で市民が自分たちの手で改革を潰して終わっていたら完璧なドラマだったのに。こんなに分かり切った正解があるのになぜたどり着けなかったんだろうか。

吉田玲子という人の名前が原作として入っていたのでてっきり小説が原作なのかと思っていたら、この人は脚本家だった。脚本家に話自体を書かせちゃダメ。この人たちは自分で話を考えないんだから。たまにヒット作を生み出す脚本家もいるけど、その人たちはたまたま話づくりもできたからであって、まず小説を書いてもらって判断すべきだと思う。

やっぱりテレビドラマはたとえ気になってもとりあえず録画だけしておいて、その後話題になったときに初めて見たほうがいいんじゃないかと思った。日本のテレビドラマは総じて質が低く、俳優の話題性でしか勝負できていない。橋田壽賀子の「おしん」は世界各国(貧しいアジア諸国中心だけど)で驚異的な視聴率を上げていたのに、そしてそこまで遡らなくても80年代90年代には少なくとも日本人なら楽しめる作品がいっぱいあったのに、いまは全然ダメ。

主に国民から強制的に徴収している受信料によって運営されているNHKだから、不透明なところで企画がまとめられ、仲良しグループで製作陣が集められ、失敗しても誰も責任を取らず、国民のリソースが無駄に使われていく。

[参考]
https://www.nhk.jp/p/ts/
VNXRGXV8Q3/

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