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二度目の人生を異世界で (コミカライズ版)

著者:安房さとる 原作:まいん (KADOKAWA MFC)

まあまあ(10点)
2022年1月24日
ひっちぃ

92歳で大往生した戦中世代の老人・功刀蓮弥(くぬぎ・れんや)だったが、神に導かれてファンタジー風の異世界に若者として転生する。本人の望みによりほとんどの記憶を消去してもらったものの、戦時中に中国大陸で人斬りをしていた経験が魂に刻まれており、人並外れた胆力と神から新たに与えられた才能により無双する。異世界転生ファンタジー小説が原作のコミカライズ版。

アニメ化の企画が進んでいたみたいなのできっと面白いんだろうなと思ってこのコミカライズ版を読んでみた。微妙だった。ちなみにアニメ化のほうは主人公が戦時中に中国人をたくさん斬り殺しているということから途中でスポンサーが降りて頓挫したというのをネットで読んだ。このコミカライズ版のほうも経緯は不明だが原作未消化のまま全10巻で完結している。

異世界ファンタジーはまず主人公がチート能力で無双するのが楽しいのだけど、この作品の場合は元剣豪という現実世界から引き継いだ能力がもとになっている。突きの強さがどうのとかは披露されるものの、ほかは特にリアルな剣術についての描写もなくただ強さだけが描かれる。

例によって美女二人組を助け出して一緒に行動するようになる。成熟しているけれどどこか子供っぽい黒髪の剣士シオンと、なぜかそんな彼女を立てているおしとやかな金髪プリーステスのローナ。軽いネタバレをすると実はこの二人、家を飛び出した貴族令嬢とその付き人なのだった。

美女がいればエッチな描写はつきものなのだけど、この作品は主人公のレンヤが記憶を消去されているとはいえ元老人ということもあってお堅いのでベッドシーンなし。美女たちの度重なる誘惑を微動だにせず受け流したり、時には厳しく突き放したりする。

元老人という設定がなんかあんまり活きていないように思う。こんないかにもゲームっぽい世界に放り込まれたわけだから、ゲームとかファンタジーの常識を破っていろいろと思い切ったことやおかしなことをしたり、戦中世代の常識とのギャップがトラブルをまねいたりするとか色々と考えられたと思うのだけど、なにせ記憶を消去されているのでただただ異様に状況判断能力の高い若者が冷静に行動するだけになっている。

剣が強いだけでなく途中で魔法の才能も開花させてしまうのも興ざめだった。

序盤の中ボス的な魔族のマッドサイエンティストがあとで女の姿になってハーレムに加わるのがとても引っかかった。こいつ人間を実験動物として扱っていたのに。主人公レンヤはかなりのリアリストなので仲間の利と天秤に掛けて決めたのはまあいいと思うんだけど、読者的にはちょっと引いてしまう。

モンスターの大群に襲われるエルフの集落を助けたり、仲良くなった魔術師の男の頼みで冒険者学校で生意気な若造をねじふせたり、婚約者が貴族だから釣り合いをとるために冒険者としての実績を上げようとする女性のワイバーン退治を手伝ったりする。

神が主人公レンヤをこの世界に転生させた目的は「時間稼ぎ」とのことだけど、悪の(?)勇者が転生してきて彼の前に立ちはだかるので戦うことになる。

レンヤを陰で助ける女旅商人キリエちゃんこと天使ギリエルが成人女性のなりでツインテールなのが自分的にちょっと魅力的だなと思った。神とレンヤの間にはさまれて苦労するところがかわいい。

勇者を撃退したところでおおむねこのコミカライズ版の幕が降りる。爵位を授けられてこのあと領地を経営していくというのがちょろっと語られて終わる。領地経営は読んでみたいと思ったけど、自分は結局主人公レンヤもそのハーレムもそこまで好きになれなかったので原作小説に手を出す気になれなかった。

安易なエロシーンに引いちゃう人とか、硬派な主人公が好きな人だったらこの作品を好きになるかもしれないけれど、自分にはちょっと物足りなかった。

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