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クローズアップ現代+ 原発事故9年 避難者の心に何が?

日本放送協会 (NHK総合 2020.3.11 22:00~)

駄作(-30点)
2021年4月17日
ひっちぃ

東日本大震災による原発事故の影響で元の生活に戻れない人たちの現在とその心情を追ったドキュメンタリー番組。

その時その時の現実を手早く切り取ってみせる速報性の高いこのドキュメンタリー番組を自分は毎回録画しており、いまの世の中を知るための良いコンテンツとして利用しているのだけど、あまり興味のない話のときは録ったまま放置している。今回ちょっと消化する気になれたのでこれを見てみたのだけど、イライラしか残らなかった。

番組の内容は要するに被災者はいまも苦しんでいるんだよということを伝えるものだった。金銭的には保証されたけれど、以前の生活には戻れていない。それなのに周りの人がこの苦しみを理解してくれない。だから番組が彼らの苦しみを伝えることにしたのだろう。

自分はこの番組を見て、繰り返すけれど非常にイライラした。被災者に対してほとんど共感できなかった。世の中にはもっとなんとかしなければならない人たちがいるのに、金銭的には十分に補償された人たちに対してこれ以上同情なんてしたくない。あとはもうがんばって人知れず立ち直っていけばいいと思う。そりゃ心無いことを言ってくる人たちもいるかもしれないけれど、そんなのはあくまで一部なのだからそこまで周りが気を使う必要なんてないと思う。

たぶん多くの国民は、原発のおかげで彼らは潤っていたと思っている。金銭的な補償すら要らなかったと言う人もいるけれど、あくまでそのお金は近所に原発が建てられることに対する心情的な補償だし、それがなかったら誰も近くに原発を建てるのを認めないだろう。

だからそのお金のなかに万が一の事故のときに金銭的に補償できないものに対する慰謝料的なものも入っていたと考える人は多いと思う。少なくとも自分はそう思っている。その考えが正しいかどうかは別として、心情としてはそうなっている。それが違うというのであれば、そのあたりの理屈を丁寧に説明することが一番の方法だと思う。

それをこの番組は、被災した家屋を映し、住民に心情を吐露させること中心で進めている。言ってみれば同情だけを誘っている。何か問題があるから解決しなければならないというわけでもない。理解されないことは彼らにとっては問題かもしれないけれど、これを見た私たちがどうにか出来るわけでもない。

そもそも被災者に対して無理解な人たちがこんなドキュメンタリー番組なんて見るはずがない。これはワイドショーでやるべきだ。

同情を誘いたいわけではないにせよ理解を求めたいのなら「みんなに分かってほしい」みたいな言葉は言わないほうがいいと思う。避難が続いて荒れ放題になっている家や、人がいなくなった商店街や職場なんかをありのまま見せるだけのほうがいいんじゃないだろうか。9年たっても避難生活が続いて落ち着けないことについては、いい加減どこか別の場所に腰を下ろして生活せいやと思ってしまうので逆効果かもしれない。いまの生活をリセットしたい人だって多そうだし(笑)。

最後にまとめると、この番組は制作者側の自己陶酔と被災者側の自己憐憫とが奇妙に同調してしまった最悪のコラボレーションだと思う。こういう感情に流されやすいものこそ、落ち着いて冷静に作らなければならなかったんじゃないだろうか。

こういう番組を作るんだったら見たい人だけ視聴料を払って見れるよう早くスクランブル化して受信料を廃止するべきだ。

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