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超不都合な科学的真実

ケイ・ミズモリ (徳間書店 5次元文庫)

まあまあ(10点)
2009年8月29日
ひっちぃ

ガンの特効薬、電子レンジの健康への害、アメリカで起こる大停電の謎、逆再生のメッセージの力、実在がほのめかされる反重力など、オカルトじみた事象が存在するかもしれないことを色々な資料から解説してみせた本。

大手出版社の一つ徳間書店が、多分確信犯的にこういう怪しい内容の本を5次元文庫というレーベルで出し始めた。頭からウソと決めて掛かるよりもまず読んで、本当かどうかはともかく楽しめればいいと思って買ってみた。

まず、ガンには既に特効薬があるというもの。HIVのように人間にしか掛からない病気には、他の動物なら抗体があるのではないか、ならその抗体を人間に移せばいいんじゃないか、というアプローチや、いわゆる同毒療法みたいに違う病気に感染させると免疫力が働いてガンが消えたという報告、さらに実際にワクチンまで作ったという主張を取り上げている。作者によると、それらの報告やワクチンが裁判で破棄されたという記録が実際にあるのだそうだ。

ではなぜ全世界に広まらないのかというと、ガンの治療で稼いでいる医療機関が多いからなのだという。なにやら陰謀論めいているが、実際にこれに似たようなことは確かに存在する。水道水にフッ素を入れている国が実際にあり、虫歯の予防に効果があるといわれているが、日本では行われていない。本当に効果があるのかどうか、副作用もあるという声も聞くが、歯医者の団体からの圧力があるんじゃないかと勘ぐりたくなる。ちょっと話は違うが、ミートホープの事件で明らかになったように、国は消費者よりも生産者を保護する傾向が強いことからも推測できる。

次の章で紹介されているソマチッドという微生物?はちょっと眉唾な感じ。なにせ生物の健康はこの微生物の働きに左右されるというのだ。しかも活きのいいソマチッドを注入すると病気が治るのだという。存在するとしたらミトコンドリアみたいなものなのだろうけど、にわかに信じられない。

電子レンジはソビエトでは有害だという研究結果が出ていたらしい。普段私たちは電子レンジを使って暖めたご飯があまりおいしくないことにはなんとなく気づいているから、何か有害な物質が生まれていると言われると真実味がある。まあ食品関係は有毒かどうかの線引きが難しく、まるっきり無害な食品はないのだという論理もあるのだから(それが巧妙な言い訳なのかもしれないけど)、電子レンジが有毒だとしてもたとえば数十年後にガンになる可能性がほんのちょっと上がるかも、抗がん作用であっさり打ち消されるかも、みたいなことかもしれなくもある。

慢性病の主な原因は酸性腐敗便という危険な腐敗をした食物によるものだという。心臓病も高血圧も大体これが原因らしい。断食すると便が出きって健康になるという話と関連があるのだろう。

アメリカでたびたび起こる停電は、電磁波を使った新兵器の実験なのだと言っている。でなければあれだけの先進国でバカみたいに停電なんて起きないし、それをほのめかす観測記録も残っているのだそうだ。

電気自動車など、化石燃料以外を使った自動車は本当はもうかなり実用化できるのに、産業界の影響で広まらないらしい。根拠として、あの巨人GM(ゼネラルモータース)の電気自動車が不可解な回収のされかたをしたと解説している。でもトヨタなどのようなハイブリッド車は市民権を得ているし、アメリカでは日本勢を差し置いて電気自動車の普及が始まっているらしい。

声で健康状態が分かるばかりか、声の中の悪い成分を逆位相で打ち消すような音波を聴くことで病気を治すことが出来るバイオアコースティックスという技術があるという。作者は実際にそれを体験して効果を確かめたらしいが、偶然である可能性もあるとして結論を早まっていない。

名曲の数々には、逆再生してもメッセージが読み取れるものが多いのだという。人間は無意識に逆再生のメッセージを聞いて感動しているというのだ。これは個人的にはなんとなくありえると思う。ただ、特別な訓練を受けた人でないと逆再生のメッセージは読み取れないとしているところが怪しい。ほぼ全ての人に効果のあることなら、ある程度客観的に分かることだと思う。

最後の方になって、なんと反重力は存在するだとか、万物に生命が宿っているという話が出てくる。さすがにこれには確かな証拠はないらしく、作者も本気で信じているわけではないのか説明も夢を追っているような感じになっている。なにしろハニカム構造(蜂の巣状)とか特異な形を作ってやると特殊な力学が働いて反重力が生まれるというのだ。

ただ、これまでの歴史を振り返ると、まんざら絵空事とは言い切れないような気もする。大昔だったら、ジャンボジェットのような巨大な物体が空を飛ぶなんてことはまず想像できなかっただろう。その仕組みだって、翼の上下で空気の流れを変えることで翼の上の気圧を下げて浮力を得る、なんていうベルヌーイの定理によって説明される原理は、物理ができる人じゃなければ信じられないと思う。こういう意外に簡単な方法であっさり反重力が実現できないとも限らないんじゃないだろうか。なにしろ量子力学によって物体の存在すら揺らいでいるぐらいなのだから。

この本に紹介されていることはどれも一般には疑わしいことばかりなのだけど、作者の視点はどちらかというと突き放されていて、あくまで紹介というスタンスを取っているように見えた。それが逆にこの本の内容に説得力を与えていると思う。と同時に紹介者としての誠実さも感じた。オカルトに誘うような姿勢ではないと思う。

多分オウム事件の影響なんかで、オカルトっぽいものを極端に嫌う傾向があるように思う。麻酔の原理は実はよく分かっていない、など世の中には不思議なことがまだまだあって、むしろ科学で何でも説明できた気になってそれだけが本当のように思うことこそ危険なことだと思う。特に宇宙物理学なんて完全に想像の世界だし。観測で推測できるとはいっても、ビッグバンがすんなり受け入れられていることには違和感を感じる。だからたまにはこういう本を読んでもう一度世の中の不思議を味わってみるのもいいんじゃないだろうか。

(最終更新日: 2010年1月28日 by ひっちぃ)

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