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物語 大江戸牢屋敷

中嶋繁雄 (文春新書)

まあまあ(10点)
2002年6月29日
ひっちぃ

江戸時代後期の牢屋をめぐるさまざまな話。牢の中での生活やしきたり、リンチや拷問、それから吉田松陰を始めとした投獄された幕末の有名人のエピソードなどを描く。

前半は牢屋敷そのものについて描かれている。白土三平の有名なマンガ「カムイ伝」に描写されていた、新入りをキメ板で叩くなんていう習慣もちゃんと解説されていて、妙に懐かしくなった。

岡っ引きが犯罪を犯して入牢するとリンチが待っていたらしいのだが、三日間にわたっていびり倒して殺してしまうのだそうだ。いびりの一つはこう始まる。
「新入りに、ご馳走をしてとらせろ」
「ご馳走のお膳ができやした」
「オー、然らば……」
うんこをてんこもりにしたお椀が前に置かれる。
「これ、神妙に馳走を…」
「おかわり!」
どんどん食わされるらしい。

トイレの呼称がおもしろい。雪隠や厠ではなく「詰の神様」なのだそうだ。

牢が人で多くなると「作造り」と称して間引きするらしい。「カムイ伝」で見たときは半信半疑だったが、本当のようなので非常に恐ろしい。そうでなくても、牢の中は不衛生なので、健康な人でも一年も経たずに死ぬことさえあるらしい。

一方、金を工面できてついには牢名主に次ぐ地位にまで登り詰め、牢内を快適に過ごしたという渡辺崋山のような人もいるらしい。

牢を運営する側の役人も少し描かれている。池波正太郎のシリーズで有名な鬼平こと長谷川平蔵や、幕府の派閥争いにより奉行が変わり、策略により投獄したり釈放したりする。

まあ、それなりに興味深い本ではあったが、そんなに面白いというほどでもなかった。ただ、江戸時代の様子についてのイメージが沸きやすくなったことは確かである。

私が読んでいて一番意外だったのは、江戸の牢屋敷から脱獄していまの山梨県まで逃げてきた男が、同心たちの捜査によりあっさり捕まってしまったという話である。この頃から警察が優秀だったのには驚かされた。風呂屋で衣服を盗んだ女性が捕まっただとか、さほど現代と変わりないようで奇妙に感じた。

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