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星界の戦旗 I

森岡浩之 (ハヤカワ文庫)

傑作(30点)
2008年7月29日
ひっちぃ

貴族の義務として兵役についている帝国の王女ラフィールは、見習い士官だった前作から三年を経て、突撃艦の艦長に就いていた。人類統合体を事実上の盟主とする四ヶ国連合に辺境を攻め取られてから膠着状態となっていた帝国は、ついに反攻を開始する。独特の空想未来の宇宙を舞台とした戦記の本編の第一章。

大規模な宇宙戦争を、四組のコンビによる対話を中心に描いている。

まず前作「星界の紋章」から引き続く王女ラフィールとジント少年。艦長になったラフィールは、事務方の士官養成学校を出たばかりのジント少年を自らの艦に招く。年配の元商人、無口キャラの女の子、ジントと同じ地上世界出身のエンジニアが加わり、最前線での戦いに駆り出される。王女ラフィールのツンデレぶりに磨きがかかる。しかし作品全体からみた比率は下がる。

女王様っぽい提督と、彼女になぜか気に入られたかわいそうな参謀長。坊ちゃん気質の提督と、お姉さまタイプの参謀長。変わり者一家の双子の提督と参謀長。これらの三組のコンビが加わり、作品の世界が広がっている。多分どんな読者でも必ず一組は好きなコンビがいるはず。正直ちょっと狙いすぎな気はするが、作者のサービス精神に頭が下がる。私は特に変わり者ビボース兄弟のやりとりが好き。

学生時代にこの作品に出会いたかったなあ。私は昔は戦記ものが好きで、ガンダムとか銀河英雄伝説とか見て楽しんでいたのだけど、いまはそれほどでもなくなった。当時出会っていたらこの作品のことを理想的な戦記ものと思ったかもしれない。いまはそれよりラフィールのツンデレぶりを楽しみたいのに、やや欲求不満な感じ。いまはどうしても戦記の部分が作り物のような感じがしてならない。

戦いの描写だけでなく政治も描いているところは良いが、戦争ありきとなっているせいか外交がお粗末な感じ。戦争が始まるには必ず理由があるはずだが、その理由が乏しいように思えてならない。資源?経済?主義?人気取り?

(最終更新日: 2008年7月29日 by ひっちぃ)

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