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涼宮ハルヒの陰謀

谷川流 (角川スニーカー文庫)

まあまあ(10点)
2007年3月14日
ひっちぃ

波乱の年末が終わって一ヶ月が過ぎ、いつも太陽のように明るい女・涼宮ハルヒがおとなしくなったと思ったら、ほんの八日後から未来人の友達・朝比奈みくるが理由を知らされず主人公・キョンの元にやってきて、遠い未来を守るために不可思議なことをやらされるハメになるとともに、やがて明らかになる超々近未来のあきれる事実が明らかになっていく話。

今回の中心人物は未来から来た美少女・朝比奈みくるだ。シリーズ最長の長編が最初から最後までほぼタイムトラベルものとなっている。タイムパラドックスの妙味や考察、小気味のいい仕掛けと遠大な伏線(?)、主人公たちSOS団の団結などが描かれる。

今回私は再読しての感想を述べるが、初読のときの印象が悪かったのに比べると、やや評価が良くなった。本作は特に初読のほうが楽しめるほどタネのあるミステリー風の話で、展開が分かっていて読むというのも本当は厳しいのだが、逆に二回目だからこそ種明かしまでの伏線を全部理解できるという良い点もあった。

率直に言って本作はやはりあまり完成度の高い作品とは言えないと思う。遠い未来を守るための展開が間延びしていて大して面白くない。一方で、超々近未来に起こる出来事の伏線と結末はとても面白かった。主人公・キョンがハルヒにいたずら電話を掛けた理由が明らかになるところは本作で一番緊張感のあるシーンだと思うし、なぜ最初に朝比奈みくるが八日前にやってくるときに何も知らされていなかったのかが最後に明かされてニヤリとさせられた。

私はミステリーがあまり好きではないのでよく分からないが、作者はミステリーが好きらしいので、本作での特に大人の朝比奈さんからの手紙などの仕掛けはミステリーの魅力なのかもしれない。ミステリーが好きな人なら本作の評価はそれなりに高いかも。

ちょっと気になるのは、涼宮ハルヒと長門有希が本当にだんだん普通の女の子に近づいていっていることだ。ハルヒのほうはちょっとあからさまな描写があってほころびてこないか不安になるし、長門のほうはこのままどういう理屈で人間らしくなっていくのか心配になる。ただしどちらも深く考えなければ本作ではとても魅力的な側面を見せてくれていて楽しめた。

本作で新たな組織や勢力の存在がはっきりと示され、今後の展開にどうやってそれらが絡んでくるのか、期待よりも危なっかしさを感じてしまう。新勢力で気になる男と女が一人ずつ新登場しているので、この二人が以降どのように活躍するのかが楽しみではある。

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