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涼宮ハルヒの暴走

谷川流 (角川スニーカー文庫)

傑作(30点)
2007年3月11日
ひっちぃ

現実を変える力を持ちながらそれに気づかない女子学生・涼宮ハルヒと、その周りに本人だけ知らず集まる宇宙人と未来人と超能力者の学生、それにまきこまれる男子学生キョンの騒動を描いた人気シリーズの単行本五巻目で短編集。

今回は再読でレビューする。初読時は本シリーズの短編集はどれも今一歩に思えたのだが、もう一度読んでみて評価が変わった。軽いネタバレがあるので気になる人は読まないほうがいい。

「エンドレスエイト」は、涼宮ハルヒの心の奥底の願望により八月が終わらなくなってしまった状況からの脱出を描いている。まず主人公たちSOS団の日常が普通に楽しい。次にSF的な仕掛けが面白い。アイデアとして一見平凡なように思うが、この手の超常ほのぼの物語に導入したのが新しいと思う。また、結末のつけ方が小気味よくて読後感がいい。私の好きなSF作家・草上仁の作風にやや近いものを感じる。

「射手座の日」は以前やりこめたコンピュータ研の面々と対決する話。こういう学園での集団対決モノは私の世代では「ハイスクール!奇面組」を思い起こし、私の好きなタイプの話だ。アニメだと長門有希がマウスの使い方を分かっていない状態からバリバリ使いこなしていくシーンがあって、わざとあっさりした演出(脚本?)で流していたのがウケたが、原作ではそのようなシーンはなかった。アニメ映えした回。

「冬山症候群」は遭難して謎の無人の館に閉じ込められ脱出する話。数学が前面に出てきてこれはこれで面白い。ほんのお遊び程度にしか使われていないが、かっこいい使い方をしていると思った。空間と時間の異常についてとか、ヘンな幻想を見せられるところとか、ハルヒが長門に対して抱く感情とか、一つ一つは小粒で意味不明だったりするものの、全体を通じて私の中では一番印象的な短編(中編?)となっている。

主人公と長門は一体どういう関係なのだろうと気になってしまう。作者はどう持っていきたいのだろうか。モデルとして強く意識しているであろうエヴァンゲリオンの綾波レイのように意味不明だけど魅力的なキャラというだけにしておきたいのだろうか。多分おおかたのファンはそれで大満足なのだろうけど、私はすっきりしないものを感じる。でも私も十分楽しんでいるからいいか。

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