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言の葉の庭
奔放な母親と年の離れた兄を持つ母子家庭で育った高校一年の秋月孝雄は、雨の日になると授業をさぼって公園の東屋で靴職人になるため靴のデザインを考えていた。あるとき妙齢の女性がそこでビールを飲みながらチョコを食べていた。人生の踊り場でしばし足を止めた二人の不思議な交流が始まる。アニメ映画「君の名は。」「天気の子」で知られる新海誠監督による中編アニメ映画。

この監督の作品は「秒速5センチメートル」で感動し「君の名は。」で大いに楽しめたので機会があったらどんどん見てみたいと思っていたのだけど、いくつかテレビ放送されたときに録画だけしたもののなかなか見る気になれなかった。じっくり見たいと思っていたのにその気持ちになれなかったからだった。今回早めの夏休みをとって十分時間が出来たので思い切って見てみた。良かった。

初めて二人が出会ってからというもの、雨の日になるとまた会えると確信して孝雄は公園に向かうといつもその女性がそこにいた。彼女は自分が仕事をさぼっていると言う。互いに深いことは言わないが言葉を交わしていく。孝雄は靴職人を目指していること。彼女はいつのまにか自分が歩き方を忘れてしまったということ。

題が何を意図しているのか分からないけれど、一定の距離を保ったままの二人が言葉を交わしていくことを表しているのかなと思う。あと一応短歌が鍵となっている。

あるとき孝雄は彼女の正体を知ってしまう。ちょっとネタバレになるけれど、彼女は孝雄が通う学校の古文の教師だった。女子生徒からいわれのない恨みを買い、保護者達も巻き込んでのいやがらせを受けていて、問題を大きくしたがらない学校側からも助けを得られずに孤立していた。

この先の展開は別に大したことないけれど書かないことにする。なんだかんだでこの二人がどうなるのか気にならないと楽しめないだろうから。ただこの作品はラブストーリーだったとだけ言っておく。

見終わったあとでなぜこの作品が面白かった(?)のか考えてしまった。孝雄から見てこの妙齢の女性とのふれあいはきっと楽しかっただろうなと思う。多分自分が孝雄の立場だったらと想像できるからだと思う。大人だけどどこかヘンで弱っている女性。こういう出会いが欲しいなあと思ってしまう。女性の視点から見ても仕事さぼってるときに若い男の子と会って話をするのはきっと楽しいだろうなと思う。

二人の間には言うまでもなく年の差があり、そして教師と生徒という越えがたい関係もあった。この監督は成就しない恋を描くのが好きなんだなと「秒速5センチメートル」を見て思ったし、「君の名は。」では恋が成就したけれどその部分に関してはあまり心を動かされなかったのを思い出した。本作のクライマックスがどっちなのかはさておき、それほど感動はなく感慨だけがあった。

ちょっと頭で考えてみると、大人びていたように見えた孝雄があれだけ感情を高ぶらせたのは大人にならざるをえなかった家庭環境の抑圧を一瞬跳ねのけたからなんだろうかとか、彼女は孝雄のことを悪からず思っていたはずなのにあんなことを言ってしまったのは孝雄との交流により彼女が立ち直ってきて急に改めて社会からの抑圧を感じたからだろうかとか、いくつか考えられることはあるのだけど、なんか最後はよく分からないうちにいい感じで終わらされた感があった。

孝雄が彼女の足を測るシーンがあって足フェチにはたまらない映像だった。本作のウリである雨の表現ももちろん素晴らしかった。

自分は彼らみたいにこう分かりやすく人生で足を止めたことがないので大して共感はできなかった。たぶん現代人はこんなに分かりやすくつまずく人よりもなんとなくダラダラ歩き続けてしまう人の方が多そうなので、そっちのほうを描いてくれる人はいないものかなと思う。でもそれなりに気持ちが伝わってくるようには思った。

自分が高校生の頃、生徒や保護者から反発されて学校を追われた先生がいた。授業で実験ばっかやっていたかららしい(笑)。米村でんじろうだった。

一風変わったラブストーリーを一時間以内に楽しみたいという人は見てみるといいと思う。
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