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彼氏彼女の事情 13巻
大人気少女漫画の単行本13巻。初期の巻は、エヴァンゲリオンで有名な GAINAX の手でアニメにもなった。

猫のかわをかぶって優等生を演じてきた主人公の女の子と、同じく自分を押し殺して生きてきた本物の優等生の男の子が、お互いに自分をいつわるのをやめようと仲良くなってから、物語は周辺人物にスポットライトを当てて、それぞれの「彼氏彼女の事情」を語ってきた。

12巻で一通りの物語は終わり、いきなり話は二年後になる。高校三年生で、みな進路を気にしだす。それはいいが、登場人物たちがすごい人たちなので、現実離れしているように思う。13巻の序盤では、登場人物がいかにすごい人たちなのかということを、新たに入学してきた主人公の妹とその友達の目を通じて描いているが、かなりうっとうしい。

13巻からは、いわゆる「サイドストーリー」が終わったことで、本筋の「有馬編」になったものと思われる。ヒロインの恋人の有馬は暗黒面を抱えている、というのがこれまでもしつこく伏線として語られてきた。そのたびに私は作者の力量不足を感じた。「サイドストーリー」では各登場人物を心理的に非常にうまく描いて見せたのとは対照的に、有馬の描かれかたは非常に稚拙である。私の想像力が足りないからだろうか。

こう言うのも不敵だが、作者は人間に対する理解が足りないのではないか。心理学などを駆使して積み木細工のように人物を組み立てる才はあるが、人間とその関係についての深い理解が足りないように思う。だから、有馬のすごさを、インターハイ優勝だとか模試で全国何位という風にしか描けなかったのではないか。人物を設定でしか描けないのではないか。親族の人々との争い、なんてものをいまから持ち出したところで、有馬を描ききれるのだろうか。

ヒロインが友達と組んで文化祭で演劇をやったあとに、演じるって面白い、なんて言い出したのを読んで、やばい、なしくずし的に芸能活動モノになってしまうのではないかとヒヤヒヤしたが、幸いなことにこの 13巻では演劇という線はほとんどなくなった。

もう私はこの先の展開には期待していない。古い言葉だが、ウルトラC がなければ、どうやって物語が進んでいくのか、非常に不安である。
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