Sランクパーティから解雇された【呪具師】~『呪いのアイテム』しか作れませんが、その性能はアーティファクト級なり……!~ 10巻まで |
超強力だけど呪いのかかったアイテムを作ることのできる「呪具師」ゲイルだったが、パーティにはほとんど貢献していないと言われて追放されてしまい、田舎で道具屋を開こうとする。小説投稿サイトに上げられたファンタジー小説が原作のコミカライズ版。
以前読んだ「追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する」(原作: 猫子, 漫画: 武六甲理衣, キャラクター原案: じゃいあん)がとてもおもしろかったので、同じレーベルで巻末の広告に一番最初に紹介されているおそらく人気作と思われるこの作品を読んでみた。期待ほどではなかったけどそれなりにはおもしろかった。
題のとおり一時期流行ったいわゆる「ザマァ系」つまり要らないと言われた主人公がいなくなった途端にみんな困って後悔するタイプの作品だった。よくサブカル系の情報交換をする同僚がこの系統の作品のことが苦手だと言っていて、いままでその気持ちがよくわからなかったけど、この作品を読んでその気持ちが少しわかった。主人公を追い出したパーティがボロボロになっていくのを執拗に描いていた。自分勝手な人たちがひどい目に合うのは胸がすくので自分も好きなんだけど、さすがにここまで描くのはやりすぎなんじゃないかと思った。
主人公ゲイルは題のとおり「呪具師」という呪いのかかった道具を作ることのできる特別なクラスの冒険者で、彼の作り出した一見気持ち悪い道具の数々が元いたパーティメンバーの能力を大きく底上げしていたのだけど、彼らは道具の力を得られなくなってからもまさかゲイルの道具にそこまで力があったとは思えず、逆にゲイルが自分たちに呪いをかけたのではないかと疑いだす始末だった。
パーティを追い出されたゲイルは、田舎で道具屋を開こうと思い、とりあえず旅費を稼ぐために手持ちの呪具を露天で売りさばくことにする。彼は自分の作り出す超強力な道具の効果の数々をお客さんに最初華々しく紹介するのだけど、最後に「呪われています」と言うのがウケた。彼はすごい道具を作り出すことにかけては超一流なのだけど、センスが独特というかとても悪いので不気味で最初は誰も手を出すのをためらう。
半信半疑のまま買っていった客たちは、あとになってその呪具がとても強力なアイテムであることに気づくけど、そのときはもう彼は田舎へ向けて旅立っていたのであった。こういう無双の仕方は目新しくて愉快だった。
ゲイルは道具を作るだけかというとちゃんと冒険者としても一流で、なにせ自分で作った強力な呪具を使いこなせるのだから強いに決まっている。また、呪具の材料となるアンデッド系の素材を入手するために、特にアンデッドに対して強い。というかアンデッドに対して親しみすら覚えていて、この世に未練を残していたアンデッドを成仏させるようなプリーストみたいなこともする。
ヒロインはまずゲイルと入れ代わりにパーティに入った支援術師モーラで、こいつはいち早くゲイルの実力に気づき、すぐにパーティを抜けてゲイルのあとを追ってくる。ゲイルの実力を認めながらもそのセンスだけは受け入れられず、アンデッドに対しても恐怖を抱く普通の女の子って感じ。でも前のパーティの面々をぶちのめせるほど強い。
ほかに、ゲイルが腰を下ろした農業都市でギルドマスターをやっていたダークエルフの女ギムリーとか、その街の女鍛冶師シャリナ、暗殺者リズネットなんかが出てくる。全員気が強い(?)ので好みが分かれそう。というか自分は気の強い女が好きなのだけど、あんまり引かれなかった。
彼女たちは物語に乏しかった。この中で一番意志を感じるのはダークエルフの女ギムリーなんだけど、こいつは自分がなにかしたいのではなくて自分の一族のためにゲイルに助力を乞う。女鍛冶師シャリナは自分の商売第一だし、暗殺者リズネットは恩を返すためだった。あ、リズネットには物語があったw でも出番が少なくて冒険にも置いていかれてる。
正直絵に魅力がなかった。ヒロインの顔形が全員すごく似ている。ちゃんと女の子っぽくは見えるんだけど、たぶんそれは髪型のおかげだと思う。顔の形がとがっていたり、体つきが筋張っていたりして、あまり女性的な特徴がない。そういうヒロインが一人ぐらいだったら良かったと思うんだけど、全員似たような感じなので飽きてきた。
ゲイルが道具屋として成功していくのを見たかったのだけど、長い冒険の旅に出てしまう。道具屋と冒険とが並行して描かれたらよかったんだけど、途中に村や街もない未開の地へと向かってしまうのでせっかくの商売とクラフトの要素がなくなってしまった。あ、クラフトは途中でゲットした素材を使ってなにか作ってたっけ?
若い男性キャラが出てこない。ゲイルが追い出されたパーティにはいたけど、完全に悪役だった。たぶん女性読者のことは考えていないんだと思う。
主人公ゲイルにもあまり興味を持てなかった。こいつは自分のセンスをわかってくれることがたぶん一番うれしいんだと思うけど、明らかにヘンなのであまり共感できなかった。女の子にもあまり興味がなさそうだった。天真爛漫な少年誌系の主人公って感じ?実際少年誌系のレーベルだしそういう作品を選んでいるんだと思う。
一風変わったクラフト系のファンタジーものを読んでみたいなら悪くないと思うけど、正直あんまり人に勧めたくなるような作品ではなかった。ファンタジーものが好きで魔法なんかで無双する作品には食傷気味で恋愛ものとか露骨なハーレムものが嫌いな人にはいいと思う。
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