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落日のパトス 2巻まで
マンガ家の卵の青年・藤原秋が住むアパートの隣室に、高校の頃に副担任だった若くて胸の大きい祐生まこと先生が新婚の夫とともに引っ越してきた。壁の薄いアパートで隣室から彼女のあえぎ声が聞こえてくる。青年マンガ。

ちょっと絵柄が古いけれど少しだらしない体の女性が魅力的な表情を見せる表紙を見るたびに気になっていたので読んでみた。登場人物はみんな好感が持ててよかったんだけど、ストーリーが単純すぎて読んでいてバカバカしくなったので途中で読むのをやめた。

まずは青年とアシスタントの女の子とがとても親しげに話している描写から始まる。でも青年にとって彼女はあくまで仕事上の付き合いであって、自分とは縁のない女性だと思っている。きっと彼女にはいい相手がいるんだろうなあと想像しながら、彼女の忘れていったタオルのにおいを嗅いでいる。

高校生の頃、保健室で具合が悪くなって寝ていた先生の胸が少しはだけていたのを見て、ついムラムラして彼女の胸を触ってしまい、目を覚ました彼女と目があってきっと軽蔑されただろうと思っていた。しかし、再会した彼女はそんなことも覚えていないかのように気さくに話しかけてくるのだった。

で夜中、彼女のあまりのあえぎ声についベランダに出て隣室をのぞき込むと、そこにはだらしない表情を浮かべながら夢中で腰を振っている全裸の彼女がいた。

という昭和のような性欲全開の青年の物語が昭和の絵柄で繰り広げられるのかと思いきや、この作品では女性側の視点も描かれる。結婚後に初めて性の喜びを知った彼女だったが、体の弱い夫からは満足のいく行為をさせてもらえず、体を持て余していた。

そんなそれぞれの事情を抱えながら、教師と教え子だった二人は少しずつ互いのことを見せ合って関係が近くなっていく。

なんか知らないけど高橋留美子「めぞん一刻」を思い出した。たぶんそんなに関連性はないんだけど、年上の女性に惚れる男性の物語という点では似ているのかもしれない。

作者の艶々は自分の中ではエロマンガ家だと思っていたけれど、ちょっと調べてみたら18禁の成年マンガよりも一般誌の青年マンガを主に描いている人らしい。この人の絵は、顔のパーツ配置なんかが実際の人間とはかけ離れているんだけど、マンガならではの描き方でとても魅力的だと思う。メジャーどころでは山本直樹、エロ畑ではきお誠児なんかを思い起こした。

エロや情念以外の要素があったら読み続けられたかもしれない。マンガ家の卵の青年が連載を勝ち取るために創作活動を続ける話とか、彼女と夫の家庭事情とか、アシスタントの女の子の気持ちとか、そういうの一切なくて、ひたすら二人の情欲が交わるか交わらないかだけを追っていく気になれなかった。自分は2巻までしか読んでいないのだけど、3巻以降でそういった展開もあるのだろうか。

逆に言えば余計なものはないほうがいいからそれだけを見せてくれという人にはいい作品なのかもしれない。
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