| 貴族転生 〜恵まれた生まれから最強の力を得る〜 コミカライズ版 11巻まで |
ゲーム風のステータスウィンドウを見ることができる独特のファンタジー世界で、村の青年が皇帝の13番目の息子ノアに転生した。貴族としてのふるまいを十二分に知識として持っていた彼は、幼いうちから父親や兄弟や配下や領民に対して模範的にふるまい、信頼と忠誠を得て大きくなっていく。ファンタジー小説が原作のコミカライズ版。
2026年にアニメ化されたのを見て、シンプルながらすごくおもしろかったので、アニメも終わったことだしこのコミカライズ版に手を出してみた。おもしろかった。
一応冒頭はノアの出生から始まるのだけど、実質的には6歳から話が進んでいく。帝国十三親王つまり皇帝の実子ではあるけれど十三番目の息子という継承権が低くて立場の弱いノアは、年の離れた兄たちから投げかけられた言葉に対してきわめて慎重に受け答えしている。たとえ血を分けた兄弟であっても、皇位継承を争う者同士なのでいつなにをされるかわからない。こういう緊張感が最初から描かれていてゾクゾクした。
あらためてびっくりしたんだけど、ノアは現代社会から転生したのではなく、同じ世界の村の青年から転生したらしい。こんなに知識があるってことは村の中でもかなり頭がよくて世の中のことを知っていたことになる。転生する前はいったいどういった人物だったのか。既刊全部読んでもまったく描かれていなかった。
ノアの一番の特徴は、自分の従えている人々の力が能力値に反映されること。水の一族の力が強いアルメリアの地をもらったら水のステータスが大幅に上がった。個人単位でも有力な人間が臣従するとステータスの上昇を確認できた。逆に言うとうわべだけ従っているような人間がでてきてもステータスは上がらないのですぐわかってしまう。おそらくこれはノアだけの特性みたいだった。
ノア自身は6歳のクソガキなので力はないし、ファンタジー世界にありがちな魔力も大してなさそうなんだけど、早々に第二親王にして皇太子のアルバートから水の魔剣レヴィアタンをもらうので、こいつの力で一対一では誰にも負けないぐらいの戦闘力を得る。でも皇子なのでダンジョンを探索したりモンスターを退治したりするわけでもなかった。
この作品のほとんどは政治劇となっている。しかも、ノア自身には成り上がろうという気はないので、降りかかってくる火の粉を払うようなイベントが続く。人々が窮状を訴えれば適切に対応して心をつかむし、敵対勢力に攻撃されたら政治力や魔剣の力で振り払うし、皇帝や皇子たちから試されたら弁舌を振るう。
自分はこの作品をとてもおもしろいと思っているので想像しづらいことなのだけど、直接的な戦闘はほとんどないしヒロインとの恋愛イベントもなければ仲間との友情イベントもないので、この作品を退屈だと思う人は結構いるんじゃないかと思う。なにせ軍を率いて反乱軍を討伐せよと言われても断って兄に任せるよう提言するぐらいだし。逆にそういうところがさらに評価されて信頼を得るところが自分はおもしろいと感じるんだけど。
ノアはとても頭がいいんだけど経験不足なので一応毎回イベントごとに選択を迫られて考えをめぐらす。小さな失敗というか予想外の出来事には何度も出くわしているんだけど、大きな失敗はたぶんまったくないので物事は大体順調に進んでいく。特に皇帝に対する受け答えに関しては毎回うまくいったかどうか内心不安なんだけど、一方で失敗しても仕方ないという心構えも持っている。なんでもかんでも思い通りにいくわけじゃないのがよかった。
ノアがもらった水の魔剣レヴィアタンは実は国に伝わる最重要アイテムの一つで、他にもいくつかあってノアが何かを為すうちに手に入っていく。まあ集まることにあまりワクワク感はないんだけど。小さいフィギュアにして互いに戦わせることもでき、なぜかノアに経験値まで入るという。
絵は割と硬質で、いろんなタイプの人間がソツなく描かれていてそこそこうまいと思うんだけど、正直あまり色気を感じる絵ではなかった。皇子たちの面構えがみんな特徴的でよかった。メイドたちの服装が現代的というか独特の光沢感を感じる衣装でなんか好き。
原作小説の作者が台湾人だったことにびっくりした。Wikipediaによると台湾生まれの台湾育ちで芝浦工大に留学して来日したらしい。大学院まで出ている。言われてみたら、人を取りたてていく展開は中国の古典っぽい感じもする。日本の作品で言うとなんか不思議だけど田中芳樹「銀河英雄伝説」っぽさも感じた。
昔、台湾でリメイクされた日本の少女マンガ「花より男子」を見たら俺様キャラであるはずの道明寺司が母親に抗議するためハンガーストライキするというありえない描写があったので、台湾的なメンタリティが作品に含まれているかどうか気になったのだけど、作家個人の特性のほうがよっぽど大きいのでよくわからなかった。声優志望だったらしいしアニメが好きで影響を受けた人なのかも。
というわけで自分はこういう作品が大好きなんだけど、きっと人を選ぶだろうなあと思うので好みに合いそうだったら読んでみるといいと思う。
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