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人類は衰退しました
なぜか人類が活力を失って人口大激減した空想未来の世界。あらゆる技術と知識が失われていき、一度壊れたら誰も修理できない建物や道具を使って、人々はひっそりと素朴な農耕生活を送っていた。もはや人々が維持できなくなった大学を最後に卒業した主人公の女の子は、ラクそうだからという理由で郷里に帰って祖父と同じ「調停官」という仕事につくことになった。それはこの世界の新たな主である「妖精さん」と付き合う仕事だった。

この妖精さんというのが体長10センチぐらいの小人で、ものすごいテキトーに生きている。人間相手には人見知りするのんきな主人公の女の子とテキトーな妖精さんたちの会話がほのぼのしていて面白い。この作品の魅力の半分はここにあると思う。

もう半分は、妖精さんという空想的な存在を通じて、文化人類学だとか歴史学みたいな人類の歩み的なものが描かれることだろう。妖精さんは食料を必要としないので争いが起きないとか、なんでもありの超科学力を意味不明にも発揮して数日で摩天楼を築いたり、わけの分からないペーパークラフトでサバンナを再現して遊んだりと、荒唐無稽な展開が繰り広げられるが、そんな無茶な出来事の中に農耕民族はどうたらとか宗教はどうだとかホッブスがこう言ったとかの分析が入る。あくまでほんわかと。

妖精さんはお菓子が大好きだけど、自分たちだけではうまく作れない。主人公の数少ないとりえはお菓子づくりなので、妖精さんたちと仲良くなるために主人公はお菓子を作って持っていく。妖精さんたちは人間の作るお菓子だけでなく人間そのものが好きみたいで、主人公の女の子のちょっとしたいたずらに悲鳴を上げながらもそれを楽しむようなところがある。

と読んでいて割と楽しいのだが、妖精さんのテキトーな設定を心から楽しめない自分がいる。数日で摩天楼って。ペーパークラフトで恐竜って。じっくり腰を落ち着けて物語を楽しみたい人には勧められない。教養のほうもちょっとしたエッセンス程度だし。でもたまに息抜きで軽くて楽しい話を読みたいのであれば手に取ってみるといいと思う。
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