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HE6SE v2
中国の音響機器メーカーHifimanが初期に開発した平面磁界式ヘッドホンの名機HE6をいまの技術でリファインしたモデルの改良版。現行モデルと比較して振動板がそれほど薄くないためか高い駆動力をアンプに要求するが、製造が楽になったのかセール時に格安で売られ、一昔前のハイエンド機と同じぐらい素晴らしい音を出すのが特徴。

アメリカの家電通販サイトAdorama Cameraのブラックフライデーセールで、毎年なぜかHifimanの独自モデルが格安で売られることが日本のユーザーコミュニティの中で広く知られており、そこの情報をもとにRedditのページからリンクをたどって商品ページを見つけて$699で購入した。配送はFedex固定で$72.5掛かった。また、通関手数料と消費税で別途5,200円掛かった。合計すると日本円で大体9万円弱だった。

いきなり音について書くと、本当に素晴らしい音が出てびっくりした。特に複雑な倍音に強く、ディストーションの効いたザクザクしたギターや濃厚な弦楽合奏が脳内に気持ちよく響いた。もちろん電子音楽も気持ちよく聴けた。手持ちのbeyerdynamic T1(初代)よりも確実にいい音で鳴っている。同じ平面磁界式のFostex T60RPは低域が弱かったけれどこいつはまったくそんなことなかった。

ただ、最初からいい音だったわけではなくて、いわゆる鳴らしこみが必要だった。オンラインマニュアルには150時間以上鳴らすよう書いてあった。実際、最初はすごくもっさりした音が出た。音の立ち上がりが悪いというか、ちゃんと華やかな音が出ているのに聞いていてすごくじれったい感じの音だった。鳴らしているうちにだんだんそれを感じなくなっていった。

でもやっぱり従来のダイナミック型(平面磁界式も原理的にダイナミック型だから区別のため垂直磁界式(?)とでも言うべきなんだろうか)のような心地よく音が弾けるような張りのある感じはしなかった。ダイナミック型は中心部の強力なコイルと磁石でコーン全体を振動させるので瞬発力が高い一方で、コーンが大きくて重いので制動しにくく特に高域まで正確に鳴らすのが難しいとされる。それに対して平面磁界式は面全体がコイルになっているので正確ではあるけど微弱で勢いがないんだと思う。それでもFostex T60RPのような音がじわっと出る感じはほとんどなくて、聴いていて普通に違和感のない音だった。原理的には振動板を出来るだけ軽くしてコイルの巻きも増やして磁界を強くすれば速く正確になっていくはずで、実際上位モデルほど欠点が目立たなくなり長所が活きている。

音の立ち上がりの問題はPCMとアナログアンプである限り必ず生じる問題なのでどうしようもないと思うのだけど、じゃあDSDとデジタルアンプ(出力だけでなく入力も)ならもっと鋭く鳴らすことが出来るんだろうか。ヘッドホンの特性をもとに再生信号を変えればなんとでもなりそうだけど、やっているところはあるんだろうか。ONKYOのGRANBEATはヘッドホンごとの設定を自社モデル限定で選べるようになっているので周波数特性を考えてイコライザ設定を変えるぐらいはしてそうだけど、時間軸まで考えるところまではさすがにやってないと思う。

重要なことを書き忘れていたけれど、こいつは開放型なのでガンガン音漏れする。ハウジングがドライバの裏側も網状になっており、外の音も聞こえてくる。静かな家で聴く専用だ。

解像度(分解能)が高いといっても、高級イヤホンで聴くような精緻な音とはまた違っており、自分はやはりイヤホンのほうが好きなんだなと思った。HE6SEのほうがのびのびとしていて抜けがいいのだけど、高域にちょっとクセのある歪みを感じる。平面磁界で静電型のイヤホンであるKSE1200だとそんなのは感じないから、同じ平面でも広い面積で鳴らそうとするのは多少無理が掛かっているのかもしれない。ちなみにKSE1200は高域がちょっと原音を越えた(?)不思議な爽快感のある独特の鳴り方をする一方で、それ以外の帯域が比較的弱く感じてしまう。

ヘッドホンに解像度を求めるのは正直間違っているんじゃないかとも思う。sennheiserのHD800のように広い音場でのゆったりした音だとか、密閉型での濃縮された重低音なんかのほうがヘッドホンの強みが生かせると思う。イヤホンみたいにマルチドライバーの技術が進んだら変わるんだろうか。

付属のケーブルはXLR 4ピンのバランスケーブルで、標準プラグへの変換ケーブルもついている。Sandal先生がゴムホースみたいだと言っていたけれど、まさにそのとおりの質感で笑った。軽くて取り回しも良くてそこそこいいケーブルだと思う。

自分はXLR 4ピンでつなげられるヘッドホンアンプを持っていないので、RME Fireface UCのバランス出力でつないだ。Fireface UCのアナログ出力は標準プラグだけどアンバランスのTSだけでなくバランスのTRSでも接続できる。ヘッドホン側は標準ミニプラグのTRSなので、Ultrasone PRO900 balancedのケーブルを流用した。ホットとコールド(プラスとマイナス)が合っているかどうかは分からない。

オンラインマニュアルを読むと左右ごとに2W以上(50Ω時)の出力が出るアンプで鳴らすことをメーカーでは推奨しているけれど、Fireface UCのカタログスペックだけでは計算できなかった。電圧だけでなく電流がいるみたいだった。

あまりにパワーを要求するため、スピーカーを鳴らす普通のアンプにつなぐためのアダプターが別売りされている。そこでプリアンプにもなるCEC DX71MK2の可変XLR出力にUltrasone PRO900 balanced用のケーブルをつかってつないでみたが微妙だった。おそらく出力インピーダンスの問題で高域がやや強調された音になっている気がするし、しょせんプリはプリでパワーアンプほどの電流は出ないのだろう。

LUXMAN AS-5IIIというスピーカーセレクターにヘッドホン端子として標準ステレオジャックがついているので試しに使ってみたが、そんなに音がよくなったようには聴こえなかった。FostexのAP15mk2というベッドサイドでゲームやるときのために買った出力が15w + 15wのおもちゃみたいなデジタルアンプで試したからかもしれない。AS-5IIIのヘッドホン端子についている抵抗もあるので十分な電力が流れていないのだと思う。ちなみにAP15mk2にスピーカーセレクターを使うと故障の原因になると書かれているので要注意(切り替えなければいいんだろうけどAS-5IIIの説明書にもある種のデジタルアンプをつなぐと故障すると書いてある)。

いまは亡き東京サウンドのValveX SEでも聴いてみたら、ボリュームつまみが9時にならないぐらいでも音量がとれたけれどパッとしない音だった。っていうかこのアンプさすがにボリュームつまみがおかしいと思う。こんだけ能率の悪いヘッドホンでも9時いかないって。

ハイパワーなヘッドホンアンプとして知られるドイツメーカーLake People製のViolectric V280がDropにて$1,200で出ていたけれど、HE6SEが届くまでに締め切られてしまったので注文しなかった。出荷が二か月以上先だったし、忘れたころに届きそうだったから。国内で買うと二十万以上する。安いのだと中国メーカーのtopping A90がアマゾンのセールで四万五千円ぐらいだったけどスルーした。CayinのiHA-6がフジヤのセールで七万二千円ぐらいで買えたけど去年出たばかりでネットの評判がほとんど上がっていないので怖くて踏ん切りがつかなかった。下手なの買っても変わりなさそうだし。

今後何か掘り出し物のヘッドホンアンプを手に入れたときにこのHE6SEで試してみるのが楽しみになった。

ヘッドホンアンプにそこまで金掛けたくないという人は、同じHifimanでもAryaに行ったほうがいいかもしれない。こちらは最新の技術をもとにしており、振動板が薄いので比較的鳴らしやすいらしい。

v2になってヘッドバンドがベルト状から太い革張りのまるでB&W P7みたいなタイプに変わったけれど、重いせいか長いこと装着していると頭頂部の一点に痛みを覚えた。かつての悪名高いAKG K701のヘッドバンドでの痛みとよく似ていた。ネットではタオルを巻いてるという人がいた。

少なくとも専用のヘッドホンアンプを用意している人(DACについているようなやつではなく)で、張りのあるパーカッションやうなるようなベースの音が出なくてもいいのであれば、絶対的なコストパフォーマンスを誇る非常におすすめのヘッドホンなので覚えていたらまた来年のブラックフライデーの時にチェックしてみてほしい。ひょっとしたら別のモデルがセールされるかもしれないけれど、安かったら多分それも高いコスパだと思う。
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