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5人人狼における村人の意思決定過程の研究
人狼ゲームという対話型のアナログゲームで、もっともやることの限られている「村人」に割り当てられた人がどのように行動するのかを実験した結果をまとめた論文。

人狼ゲームの理論的な研究がどうなっているのか調べていたらこの論文を見つけたので読んでみたら、ひさびさに数学的な知的好奇心を刺激されて途中まではワクワクして読んだのだけど、最後にガックリきた。よく分からないけれどこれは修士論文なんじゃないかと思う。共著の伊藤毅志は電気通信大学の准教授なので指導教官か。NHKに出ていたのを見た覚えがある。

内容はまず人狼ゲームについて簡潔にルールを説明し、記号を用いて抽象化し、実際のゲームを「棋譜」にしてみせるのだけど、最終的にはプレイヤーにインタビューして「なぜこのときこの行動を取ったのか?」を答えてもらい、それをそのまま結論というか仮説として示して終わっている。アナログゲームを論理的に扱っているのはあくまで前提条件を説明するためで、結局は人間の思考パターンがどうなのかを考えたいだけだった。

発表されたのが日本認知科学会という認知科学の学会のようなので、まあ認知科学ならこんなもんだろうなと思う。自分は素人なのでよく分からないけれど、最近は脳科学が劇的に進んだので、具体的な脳の仕組みと絡めた研究がホットだと思う。一方でこの論文は、囚人のジレンマみたいな一定の状況下での人間の行動を実験から導き出そうという試みで、実験心理学みたいな文系の学問に近い。あんまり未来が明るいとは思えない。最近のディープラーニングの成果を見ると、もう人間の知能は数学的なモデルみたいなものであらわそうとしても無駄なんじゃないかと思う。

それはともかくとして、この論文は前提条件を整えるところまではすごく分かりやすくてキレイだと思う。これだけ短い内容でゲームの背景からルールまで説明し、サンプルも示しながら記号化してみせる。筒井大志「ぼくたちは勉強ができない」に出てくる緒方理珠という数学が出来るのにアナログゲームが苦手で心理学を学びたくて文系を目指している少女に読ませてみたい(?)。創作物にツッコミを入れるのもなんだけど、ここ数十年の学問って学際領域が多いので、理系で受験して理系っぽい専攻で心理学っぽい勉強をすることなんていくらでもできると思う。

すごいどうでもいい指摘をすると、「棋譜」の表2と表3では一行目の「プレイヤ番号」ではなく三行目の「キャスト番号」で投票先をあらわしているのが混乱した。次の表4には「キャスト番号」がなくて「プレイヤ番号」であわらしているし。

もっと本質的な指摘をすると、被験者が公立はこだて未来大学の学生である時点ですでに偏っていると思う。

数学は数式だけじゃないんだよというのを知ってもらいたい相手に読ませてみたい。
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