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プライベート・ライアン
第二次世界大戦中、四人兄弟全員を戦場へ送り出した母親がいて、三人死んでもう一人も死にそうなので、助けに行かせる話。

私は最初この作品を誤解していた。一人を助けるためにいったい何人死ぬんだろう。エセヒューマニズムなんて見たくもない。そう思っていた。しかしこの作品は、違った視点で救出劇を位置づけていた。戦場にいる男たちにとって、自分たちのやることで誇りに思えることがあるとしたらなんだろうか。それは敵をどれだけ倒したかということか? いやそうではなく、どれだけ犠牲を払おうとも、せめて誰かを救出したという事実なのではないか。

ただ敵と戦っているだけならば死なずに済んだ人間もいたのだろう。だが、そんな犠牲よりも、せめて人間らしく誇りを持ちたい、そうでなければやってられない、という悲壮感がある。

最後にアメリカの国旗が画面いっぱいに出ておしまい、という演出はなんとも言いがたいが、それでもアメリカ映画にしては最大限の中立を守ろうとしたのではないかと思う。むしろ星条旗は、一部の愛国心にあふれすぎたアメリカ国民への、イイワケとして働いているようにも思う。

この映画をみて私が第一に思ったのは、あの冒頭の三十分にも及ぶ壮惨な強襲上陸シーン、ひたすら兵士が敵の銃座に向かって突撃しなければならないさまを見て、絶対に戦争には行きたくない、ただそういう単純な思いである。戦争が起きたら、まあ現代の戦争で死ぬとしたら私は兵隊ではなく市民として死ぬのだろうとは思うのだが、軍隊の作戦で自分が攻撃部隊の中で避けがたい死を迎えるのはとてもやりきれないものがある。

私は戦争に行ったことがないのでこういうのもなんだが、この映画で描かれる戦場にはリアリティがあると思う。とくに、突然壁が崩れて、アメリカ部隊とドイツ部隊が銃を向け合って口々に「銃をおろせ降伏しろ!」とわめきあって膠着するところ、少ししてアメリカの救援部隊が膠着中のドイツ部隊の不意をうって掃討射撃するところ。一対一でアメリカ兵をナイフで殺したドイツ兵が、引き上げるときに全然士気のないアメリカ兵をだまって無視して通り過ぎるところ。

ミリタリーファンには別の楽しみもあっただろう。ドイツ軍のタイガー戦車や 20mm砲や自走砲などが出てくる。私の弟なんかは、兵隊の襟章を見て、これは親衛隊だ、などと言っていた。

ただ、物語としてはどうか。主人公は多分、元教師で救出部隊の隊長である大尉なのだと思うのだが、ところどころ手が震えたりするのにどんな意味を持たせたかったのか、いまいちよくわからなかった。本当は戦いたくないんだ、というだけの意味しかないのだとしたら陳腐すぎる。ことさら強調すべきことではない。

結局この大尉は、自分に誇りを持とうとする最後の試みに失敗して、半ば生きる意志を失ったように敵の銃弾に倒れる。ささやかな人道的目的だけでは、とても戦場にいる自分をたもつことができない。

この作品が救出劇を主眼にしているのだとしたら、最後は当然息子と母親の再会がクローズアップされるところなのだろうが、その点安易な感動劇にしようとしないのはさすがである。この作品はあくまで、救出に向かった男たちの、戦場での悲壮な物語なのである。いやむしろ、戦場それ自体を描いた作品だといえよう。
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