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オイコノミア「世代の“格差”ってどういうこと?」
世代間格差の問題について、まずは意識の差から見ていった上で、実態がどうなっているのか、これからどうしていくべきかという議論を行っていく番組。

番組名の「オイコノミア」とはエコノミクス(経済)のもとになった古代ギリシャ語の言葉らしい。NHKのEテレ(教育テレビ)でやっている経済学を紐解く番組の、世代間格差を扱った回。一応前編後編に分かれているけれど、特に区別しない。

大阪大学特別教授の大竹文雄という人がおっとりとした口調で話を進めていき、芸人のピース又吉直樹が聞き手をしている。また、特に格差を専門にしている横浜国立大学の准教授の近藤絢子と、エッセイスト・モデルの華恵(はなえ)が、それぞれ氷河期世代とさとり世代の代表も兼ねて参加している。

日本に限らず世界的に見て世代間格差の問題はひどいんじゃないかと自分は思っているので、ズバリと切り込んでいってくれているのかと思ったのだけど、この番組では全世代から十人ずつ観客を入れてまんべんなく意見を聞いていくという公平(?)で平和的な内容だったのでちょっとがっかりした。ただ、期待していなかった部分で興味深いところがいくつかあったので紹介していきたい。

最初は世代間の意識の差を浮き彫りにする調査で、たとえば「働かないでお金をもらうのは恥である」という質問に対して、全世代でNoが多かった。高齢者ほどYesかなと思っていたのだけど、彼らは現在年金をもらっていたり投資の配当で食べていたりするので、今の自分のことを考えてNoと答えたのかなとも思う。

差が出たのは「人生の成功において最も大切なのは努力よりも運やコネである」という問いに対して、若い人ほどYesと答えた人が多かった。氷河期世代の人たちなんかは就職難で努力が報われにくかったんじゃないかと言っている。一方で高齢者ほど自分たちが努力をしてきたからこそ今があるのだと思っているらしい。

「頼みごとを聞いてもらえたらお返しをする」は全世代でYesだったが、じゃあ「身銭を切ってでもか?」となると差が出た。サンプル数が少ないので難しいのだけど、三十代と六十代でNoが多く、それ以外の世代は半々ぐらいだった。

そのあと、この互恵性(助け合いの精神)はなぜ世代間で異なるのかを、掘り下げて調べていっている。大竹文雄の調査によると、競争のあった人たちのほうが互恵性が高かったらしく、勝ち負けがハッキリするほど逆に助け合うようになるようだと言っている。統計的には明確に相関関係があるらしい。ただ、なにせ色んな要素があるので結びつけるのは危険だと思ってしまう。しかし、「働かないでお金をもらうのは恥である」の質問にYesと答えた人と「小中学校に二宮金次郎の銅像があったか」の質問にYesと答えた人との間にも明確な相関関係があったらしいので、こういう地道な調査が真実にたどり着いているような気もする。

そのあとようやく世代間の格差の問題に入っていく。日本に限らず世界的に存在すると自分は最初に言ったけれど、日本が特にひどいのだという数字が示された。以下は「受益に対する負担の世代間不均衡」という調査結果。

アメリカ 51%
フランス 47%
スウェーデン -22%
日本 169%
※0%に近づくほど受益と負担が均衡する
1995年調べ/教育支出が政府支出として扱われる場合

調査のやり方によって数字がだいぶ違ってくるのだとは思うけれど、もし極端に出した値だとしてもこの差はひどいと思った。まあ氷河期やロスジェネ世代は親が豊かだから子供時代は恵まれていたじゃんみたいなこともあるのだけど、不思議なことに番組ではほとんど触れられていなかった。不公平なのは大体みんな認めている。

このような格差を「財政的幼児虐待」と言っている学者もいるらしい。ネットで調べてみたらボストン大学のコトリコフ教授という人の言葉みたいだ。

最後に番組では世代別にディスカッションをして終わっている。世代間で意見を戦わせるのではなく、あくまで世代別で自由に意見を出させることを選んでいる。

という話はまあ比較的どうでもよくて、自分が一番思ったのは、聞き手をしている芸人のピース又吉が非常に落ち着いていてよかったことだった。というのも、この番組を見る前に同じくEテレの「チョイス あなどれない!耳鳴り」を見ていて、同じような立場で出演していた芸人の星田英利(ほっしゃん。)が随分食い気味に反応していて正直危なっかしいなと思ったからだった。

星田英利(ほっしゃん。)がまるっきりダメだったというわけでもなく、もとの芸風の印象が強かったのでむしろこの人は意外と頭がいいんだなと思った。そのうえで、何も分からない視聴者の目線で先生の話を聞いていき、内容を理解していくという立場で進めていっているなあというのが分かったのだけど、それにしては喋りすぎているなあと思ったのだった。

ピース又吉はもとの芸風がそのままなのもそうなのだろうけれど落ち着いて話を聞いていて、必要なことを必要なだけ喋っているなあと思った。日常生活で会話していると、相手が言いそうなことがある程度分かることがあって、ついつい自分がそれをしゃべってしまうことがある。その場で一番ふさわしい人に発言を譲るということ、相手にちゃんと会話をパスすること、というのを意識しないと、やりとりがぎこちなくなってしまう。ただ一方で、そこまで気を使って会話しなければならないのだとすると面倒くさくてしょうがないのも事実で、あくまで自然に会話することを目指したいというのを時々考える。

この番組については、ピース又吉以上に先生の大竹文雄の朴訥としたしゃべりの中に一番知性が光ったなと思った。相手が喋ったのを聞いて、そのうえで自分の言葉を付け足しているという感じ。最初のショートコントみたいなやりとりは脚本だろうけど。

番組は違うけれど、NHKの「クローズアップ現代」での国谷裕子キャスターのゲスト解説者への質問は時々すごくぎこちなくて聞くにたえないことがある。なにせ全国放送の生放送でインタビューするというのだからそもそも最初のハードルが非常に高いのは分かるのだけど、あれだけいままで長いことやってきても、相手にしゃべらせたいことを逆算して聞いていますというのが丸わかりな聞き方をしてしまうのはどうなんだろう。まあこれは阿川佐和子もそうだったし、準備の時間がないのが大きいのかもしれない。
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