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ラブやん 19巻まで
引きこもりのニート(無職・無学習)大森カズフサのもとに、愛の天使「ラブやん」が降臨した。「ラブやん」は天使の力でカズフサに恋人を作ろうとするがどうにもならないのだった。青年ギャグマンガ。

大阪に転勤した同僚が勧めてくれたシリーズ第二弾。講談社のアフタヌーンに連載されているらしく、同誌に連載されている藤島康介「ああっ女神さまっ」をパロッていながら、同作品とともに長期連載となっているとのこと(Wikipediaより)。自分はいままでまったく知らなかったけれど有名な作品っぽい。

題の「ラブやん」ってなんだろうなと思ったらなんと天使の名前だった。外見はそこそこかわいい普通の女の子っぽいのだけど、この作品の世界観では天使というのは普通の勤め人なのでイメージ的にはOLっぽい感じ。

それでもやはり天使というのは人と人との間を愛で結ぶ神聖な存在ということなので、「ラブやん」は気合を入れて大森カズフサの前に登場するのだったが、なんとカズフサはオナニー中なのだった。でもってこいつはどうしようもないロリコンなので、近所の小学生との仲を取り持てと言ってくる。かつてない難度の仕事に直面した「ラブやん」は、ギャグの世界に引き込まれるのだった。

天使「ラブやん」は最初あの手この手でカズフサをなんとかしようとするものの、そのうちあきらめてドラえもんよろしく(懐かしい表現だな)カズフサの家の押入れの中で暮らす生活に慣れてしまう。妙齢の女性と一つ屋根の下()で暮らすカズフサだったが、ガチなロリコンなので「ラブやん」にはピクリとも反応せず、徐々に所帯じみた感じで仲良くなっていく。天使「ラブやん」は天使の輪を装備しているときは白い衣をまとって弓矢を持ったまさに天使の格好をしているが、天使の輪をはずすと普通のトレーナーにジーンズの地味めな女の格好になる。

この作品の魅力は、カズフサを始めとした登場人物のどうしようもなさを描いた部分と、ヒロインなのに天使「ラブやん」がカズフサと同レベルのどつきあいを繰り広げるところだと思う。「ラブやん」みたいな女と遠慮のない関係になるのっていいなあと思う。実際なってみると別にそれほどには感じないのかもしれないけれど、この作品を読んでいると本当に「ラブやん」のことがかわいく思え、自分がこの作品を読み進めた理由の半分以上はヒロイン「ラブやん」の魅力にあると思う。もしベルダンディと「ラブやん」のどっちかが自分のもとに来るとしたら、自分なら「ラブやん」を選ぶ。

天使は「ラブやん」だけでなく、後輩の「みのっち」が現れて近所のカズフサと同レベルのどうしようもない男ヒデヒコのもとに居候してライバル対決を繰り広げたり、「ラブやん」の上司である外見ロリの天使長メテ・ルーが出てきて最初は圧倒するものの次第にカズフサに振り回されるようになったり、天使は女だけじゃなくてガチムチなおっさん天使が出てきたりする。

天使以外にも、近所でとんでもない料理屋を開く蛇文字さんとか、カズフサ行きつけのコスプレ喫茶「委員長」(学校の教室風の喫茶店)には委員長風の腹黒ウエイトレスがいて、近所のマニアックな常連のおっさん連中を連れて時々イベントに出かけたりだとか、なんとカズフサには幼馴染の女の子がいて実は彼女はカズフサのことを悪からず思っていたがカズフサに愛想を尽かしていたりと、登場人物は結構豊富。ただ、宇宙人ラムチェンなどのように一回登場したと思ったらずっと放置され忘れた頃にまた登場するという風に、キャラクターが豊富な割に常連キャラだけでしょうもない話が進められることが多くて、読んでいてちょっと飽きを感じてしまった。

作者があとがきで書いているように、作者はとんでもない料理屋の蛇文字さんがとんでもない料理を出したりするハチャメチャなギャグが好きなのだけど、読者投票でその回が明らかに人気がなかったことに落胆している。人によって受け止め方の違いがあるにせよ、この人のギャグセンスには偏りがあると思う。カズフサのどうしようもないロリオタヒキニートぶりや、なにかみんなでやろうというときにホワイトボードを使ってやる気のない作戦会議をするところなんかはとても面白い反面、なぜこんなくだらない展開をダラダラと続けるのだろうと思うこともしばしばだった。

絵はちょっと古さを感じる。長期連載のわりに絵のタッチがほとんど変わっていない。でも登場人物かわいい。ギャグ顔かわいい。目が縦長の点になるの。

この作品はいくつかのタブーを破っていると思う。カズフサがガチのロリ(幼児愛)で、PCにエロネタをためこんでいて、それを使ってオナニーする描写があるなど直球なところをまず挙げなければならないけれど、それよりもっとすごいのが、天使「みのっち」がヒデヒコと寝るエピソードがあったり、天使「ラブやん」がカズフサにオナニーの手伝いをさせようとするなど女の下ネタがそこそこ出てきたりするところ。他の作品だったら、より多くの読者を獲得するために、人によっては受け付けない要素はなるべく排するものなのだけど、そういうのをあんまり気にしていないのがすごい。

テレビ朝日「アメトーーク」で、女子高にいた女芸人が集まって話をする回があって、なんかそれをちょっと思い出した。共学だと男の目を気にしているせいかヘンな女はほとんどいないのだけど、女子高だと結構しょーもないこと(ものまねとかふざけたりとか)をする女が普通にいるらしい。石原さとみのお酒のCMとかのちょっとヘンな女に魅力を感じる人は多いだろうけれど、それよりもさらにヘンな領域に踏み込むとはたしてどうなのだろう。石原さとみの場合はかわいいから許されているのかもしれないし。

というわけで、あまり一般ウケしないような作品なのだけど、その分ハマる人にはとてもいい作品だと思う。
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