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少女不十分
三十過ぎの偏執的な作家が、十年前に巻き込まれた事件を回想する話。大学へ自転車で向かう途中で、二人組の小学生の女の子のうち一人がトラックにひかれる場面に遭遇するが、もう一人の女の子が友達に駆け寄る前に冷静に自分のそれまで遊んでいた携帯型ゲーム機を操作してセーブ(これまでの状態を保存してゲームを終了する)しているのを目撃する。

うーん。くどくどしい。三十過ぎの作家が延々自分語りをする。結構もったいつけて。さらに物語が起きたのが十年前のことなので、今の自分だけでなく十年前の自分について語っているところがうっとうしい。と思うのは今回私は読んでいてこの主人公についてあんまり感情移入できず愛着も抱けなかったからだと思う。私も大学まで自転車で通っていたし、内省的な性格という共通点もあるのだけれど、なにか根本的なところで自分と違っている感じがするし、そういう自分とは違うキャラとしても好きになれなかった。いろいろ言い訳がましいところとか。あ、これって同属嫌悪?

この話の筋って言っていいものなんだろうか。まあどうせ大したものじゃないし、興もそがれないだろうから書くことにする。目の前で友達が事故にあったら普通ゲームなんてほうっておいて真っ先に友達に駆け寄るところだろうに、その少女はまずゲームをセーブしてから友達に駆け寄った。決してうわべだけでなくその後は真剣な様子で友達を気遣っている。だから別に裏で仲が悪かったわけでもない。じゃあなぜこんなに異様なのか?

っていうか事故なら普通に接触事故で命に関わるような大きな怪我じゃなくてもいいのに、ここをしっかりバラバラ死体にしてしまうところが作者の西尾維新の特徴だw バラバラで確実に死んでるのが誰の目からも分かってしまうと、友達を気遣うほうがむしろ不自然だと思うのだけど…。グロによほどこだわりがあるんだろうな。

で、その少女はその場に偶然居合わせた主人公に見られていたことに気づき、主人公のことを付けねらうようになる。この先はまあ書いても書かなくてもよさそうなので書かないことにする。

少女の異常性がこの物語の中心にあるわけだけど、この異常性もいまいち不統一で納得しがたい。なぜ少女がこんな風に育ってしまったのか。両親はどんな風に育てたのか。父親と母親との関係は?親子の関係は?両親が少女に課したことは?すべてが明確に描写されているわけではないので状況から推測しなくてはならないことも多いのだけど、整合性がないと思う。だからか読んでいてこの少女についても愛着がもてなかった。

それと主人公は早々に少女のことをあきらめてしまう。確かにもう元に戻らないと思うのは現実には正しいと思う。でもここでリアリティを示されてもなあ。むしろ私は主人公がこれから時間をかけて忍耐強く少女を更生させていく展開を期待してしまった。まあ残りページを考えてもそんな展開にならないことは分かっていたのだけど、そっちのほうがよほど面白かったと思う。中途半端なリアリティで語られるよりは。

作者はこの本を書き上げるのに十年掛かったとオビに書いているけれど、私はこの本を読むのに数ヶ月掛かった。四分の一ほど読んでも話に引き込まれなかったのでそのままずっと放置していた。中盤になってようやくちょっと面白くなってくるので、この作品を読むのであればそこまで我慢することを勧める。この作品について悪く書きすぎたけれど、後半とくにラストが決まっていて読後感は良かった。最後ちょっと言葉の意味がよくわからなかったけど。

私はいまいち主人公にも少女にも思い入れることが出来なかったのであんまりこの作品を楽しめなかったけれど、内向きでくよくよ(ひねくれてるけど)した男が好きな人、病的な少女が好きな人ならば楽しめると思う。
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