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とある魔術の禁書目録(インデックス) 2
科学的に超能力を研究している東京西部の巨大な学園都市で、無能力(レベル0)と診断された劣等生の上条当麻には、実はあらゆる能力を無効化する最強の防御力が右手に備わっていた。かつて敵だった炎の魔術師に引きずられ、学園都市で学習塾を偽装する科学宗教団体・三沢塾をのっとった錬金術師と戦う。

超能力と魔術が同居する空想近未来で、能力を持った少年少女が戦う、青少年向けライトノベルの中で現在もっとも成功しているシリーズの一つの第二巻。随分前に第一巻を読んでそんなに面白くなかったので放置していたものの、アニメを見てまた興味が沸いてきたので続刊を読んでみた。

前巻での二転三転した結末から、結局主人公は部分的な記憶喪失になっていて、助けたことになっているシスター少女「インデックス」になつかれているのに、なぜそうなったのか感覚的に理解できないでいる主人公の気持ちが早くもジンとくる。少女の悲しむ顔が見たくなくて、自分が記憶喪失だということを打ち明けられずにいる。少女に対してだけでなく友達ともそうして付き合わなければならず、相手が自分に掛けてくる言葉から自分のキャラを推測して適切な言葉を選ぶことに腐心する主人公の姿が、私たちが抱える「他人から見た自分」と「自分が見た自分」とのズレの問題を思い起こさせて考えさせられる。

導入部はそんな主人公の持つ問題を説明しながら、かつての敵であるイギリス清教所属の炎の魔術師ステイル・マグヌスが主人公を強引に誘って、学園都市の学習塾・三沢塾の高層ビルに一緒に侵入することになる。その理由は、三沢塾を乗っ取った錬金術師アウレリウス・イザードが、対吸血鬼の能力を持った少女を確保したので、彼女を取り返すことだという。対吸血鬼の能力を持つということは、いままで存在が確認されたことのなかった吸血鬼という強大な力を持った生き物が存在する証明であり、その吸血鬼の力を操ることが出来る者がいたら世界にとって大きな脅威になる、という論理らしい。その他、錬金術とはなにか、などといったオカルトを、実際にあった組織に絡めて世界観として構築していて、設定が魅力的で面白い。

残虐な描写が結構ある。三沢塾の学生たちがおもちゃのように傷つけられ無残に殺されたりする。でもちゃんと配慮されていて言い訳をしているようにも見える。こういう残虐な描写ってたぶん結構需要あるんだろうな。大震災で関東の人々が西に逃げる話が現実に起きているいま、かつて読んだ筒井康隆「霊長類 南へ」みたいな、人間がゴミのように死んでいく作品を読んで興奮した覚えがあるのを思い出した。エロとグロは娯楽の王道だ。

錬金術師アウレリウス・イザードがなぜ対吸血鬼の少女を必要としたのか、というところが設定上泣かせる話なのだろうけど、思いっきり感動しそこねた。あとがきで作者が、主人公になれなかった男を描きたかったと書いている。この設定はすごく面白いと思う。でも物語としてはつまらなかった。ただでさえ難しい話なのに、シスター少女「インデックス」とのからみがほとんどないなど、作者の筆力の問題も大きいように思う。この巻だけのヒロイン姫神秋沙も消化不良だし。でも、最後の戦いで無敵の強さを誇る錬金術師のとんでもない能力を主人公が打ち破る戦闘はとても良かった。

「面白かったけれど出会わなくても良かった作品」はそこかしこにあるのだけど、この作品は「つまらなかったけれど出会って良かった作品」だと思う。アニメで見たときはもっと微妙だったのだけど、この原作小説では自我の問題と世界観が詳しく描かれているのでそのへんは楽しめた。本シリーズはとりあえずこの次の3巻目まで読んでみたほうがいいと思う。
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