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中学は私立の全寮制の学校に進学したヒロシは、親の目が届かないことで落ちこぼれて不良化し、不良マンガの影響を受けて私立ではなく底辺公立校の本物の不良たちとつるみたいと願い、親にウソをついて転校する。どこか本物ではないまがい物の不良だったヒロシが、転校先の不良たちから仲間と認められて溶け込んでいき、友情を育みながらめちゃくちゃな生活を送る様子を描いた自伝的小説。

作者はお笑い芸人コンビ品川庄治の品川ヒロシ。芸人有数のブログ王。主人公のヒロシは信濃川ヒロシという名前に変えてある。

多分普通に面白い作品だろうと思って読んでみたら普通以上に面白くて少し驚いた。引き込まれた。ヒロシは不良の転校生なので、まずは不良たちに受け入れられるところから始めなければならない。最初が肝心で、ここで失敗するとナメられるかボコられるかしてしまう。彼は以前から不良だったが頭が回るので、自分がどうやって彼らにうまいこと対等に受け入れられるのか知恵を絞る。ここがなんともスリリングでドキドキする。

その後は割と普通に日々の悪さやケンカが描かれる。普通と言っても不良なので犯罪や迷惑行為だらけなのだが、極力あっさり書かれているのかそんなに不快ではなかった。カツアゲ(恐喝)や窃盗も実際の細かい行為描写はなく、ただ事実だけを書くに留めている。喧嘩は勝ったり負けたり。追走劇になったり、多対一の乱戦、タイマン(一対一)になったりと色々。悪さはたとえば新宿でカラスを捕まえて駅のホームで離して大騒動を起こすとか。警察の厄介になること数度。

不良のメンタリティみたいなものが内部から描かれていて興味深かった。不良グループのその日その日の行動は、リーダー達也の気まぐれが元で大体決まる。楽しいことをやりたい。他人に迷惑を掛けようと無謀だろうと気にしない。そんなとき一番危険で大変なことを押し付けられる子分たちは時に必死に反対したり、リーダーの興味を別の方向に向けようとする。

この作品の一番すごいところは、よく回る頭でリーダーの知恵袋というそれなりに良い立場に収まることが出来たものの転校生というよそ者的な立場とそんなに強くない腕っ節から時々散々な目に遭う主人公を誠実に描いている点だと思う。

ヒロシはリーダー達也の彼女ミユキのことが好きになるものの、達也とミユキがセックスしているときに外で待っていて彼女の嬌声を聞いてやるせない思いを抱く。そのうえ達也はミユキをぞんざいに扱い、そのフォローをヒロシがする。ミユキと別れるからお前がミユキと付き合えと言われたヒロシは精一杯努力して告白しようとする。

そろそろ批評に移る。

自伝的小説なだけあって状況とか心情がとてもリアルなのだけど、逆に自伝的であるためにモヤモヤが残る。作者のプライドか一線だけは守ろうと取り繕ったかのような言い訳がましい説明があったり、逆に一線を越えない範囲だったらとことん開陳しようとわざとらしい自虐さを見せたりする。結局ヒロシはなぜ不良になったのか。本当にマンガからの影響だけが大きかったのか。なぜ親や姉に反抗していたのか。なぜ無気力になったのか。

ヘンに物語性を持たせずにどちらかというと淡々と出来事を描いている点にはとても好感が持てるのだが、ちょっと物足りなさもあった。登場人物の心情にあまり踏み込んでいない。まあそれもそのはず、友人たちや特に親や姉はまだ存命だろうから遠慮があったのだろう。どこまで本当なのかは知らないが、フリートークなんかで見せる鋭さからきっと作者は本当はもっと深い描写が出来るのにやっていないのだと思う。ちなみにテレビ朝日の番組「爆笑問題の検索ちゃん」に出演したときに作者が言うには、当時の知り合いが映画の撮影現場に挨拶に来たらしい。

最後、死でまとめていて「またか」と思った。でもそれほどうんざりはしなかった。チェッカーズの「ギザギザハートの子守唄」なんかに見られるように、仲間の死は不良卒業の大きな理由なんだろうな。

この作品は、本来頭が悪くてとても文章なんて書けないような不良たちの社会に溶け込んだ作者の視点による貴重な記録であり、もちろん娯楽作品であり、まあ別に比較的どうでもいいのだけど不良について考える社会問題的な作品でもあると思う。誰でも何かしら楽しめるとても良い作品なので、タレント本だと馬鹿にせずに手に取ってみる事を勧めたい。
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