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風の歌を聴け
主人公の大学生の青年が山陰の寂れた町に帰省し、そこで短いあいだだけ「鼠」というあだ名の男と交友し、片方の手が四本指のレコードショップのバイトの女と交際し、文章について人生についての取り留めない考察をまじえて奔放に描かれる文芸作品。

本作はいまや世界的な作家となった村上春樹のデビュー作らしい。ページ数は若干少なく文庫にして150ページほど。私が手にしているのは1991年第32版で定価260円のもの。

のっけから驚いた。主人公が最初に、自分がこれから文章を書くのだということについて説明づけを行っている。ぐだぐだしたしょうもない弁明ではない。どう言えばいいのか分からないことを色んな言い伝えから引っ張って詰め込んでいるといった感じだ。

そして物語は「鼠」が金持ちについて文句を言うところから始まる。最初「鼠」としか書かれていないので何かの実験小説かと思った。読んだことないけどジョイスとかあのへんの。でも「鼠」は単なるあだ名で、場面もなんてことないバーの一角だった。私は最初ほんとうに巨大な鼠が主人公とビールを飲み車を運転しているのかと思った。何か異化効果でも狙っていたのだろうか。

女との出会いもあっけない。先に朝が描かれる。そして不機嫌に目を覚ました女が主人公に説明を求める。主人公はありのまま(?)を説明する。女は終始不機嫌なまま主人公との縁が続く。

主人公とこの二人の主要登場人物との交際は、さして意味らしい意味がないまま淡々と断片的に語られる。正直面白い要素は何もない。

題名の「風の歌を聴け」は多分作中に出てくる火星のエピソードからつけられたのだと思う。それか主人公が言葉にしたくても出来なかった自然の一部のことか。

本作のテーマはとても微妙だ。人生には目的なんてないけど無意味でもない。ただそこにあるものに思い入れ(?)を抱くことの繰り返し(?)なのだと言いたいのだと思う。分かりやすい言葉を私が当てはめたらこうなった。

だから本作は逆に言えば物語らしい物語があってはいけないことになる。それが露骨なのはラジオのDJとのエピソードだろう。リスナーからの手紙で、主人公に昔レコードを貸した女がいて、女にレコードを返してやってくれと電話で言われる。つまりDJが現実に対して物語を当てはめようとしたわけだ。主人公もそれに乗せられて女(物語)を探しに行くが、結局途中で女への手がかりを失ってしまう。あとにはレコードとシャツ(DJの番組特製の)だけが残った。

ほかにも、「鼠」がいて、女がいて、彼らの周りにも取るに足らない何かが沢山あって、本当にそれだけの話だ。好意的に言えば、それに気づかせてくれる作品だと言える。

でもやっぱり言っておかなければいけないのは、本作は全然面白くない作品だということだ。本作で描かれるようなことは多分年をとった人間ならなんとなく分かっていることだろう。それをあえて物語の枠組みの中でアンチ物語として描いてみせたことに対して、私はそれなりの面白みを見出すことが出来る。しかしやっぱり物語を読むからには物語を楽しみたかった。
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