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日露戦争に投資した男 ユダヤ人銀行家の日記
日本が日露戦争を遂行するために必要となった資金を債権という形で多額の出資をしたユダヤ人投資銀行家ジェイコブ・シフが、その後日本に旅行をして大歓迎される日々を綴った日記を翻訳したもの。簡単な伝記もついている。

これ題がちょっとおかしい。「日露戦争に投資した男」という題では内容が違う。副題と題を逆にすべきだろう。しかし恐らく編集か営業あたりがマーケティングを考えてわざと逆にしたのだろう。こういう本が多すぎる。やはり売れるには効果的だからだろう。私のような買う馬鹿がいるからこうなるのかも。題が逆だったらたぶん買わなかった。

だから内容を紹介するのも少々癪なのだが、そんなにつまらない本ではなかった。翻訳という手が入っていたり、所々省略されていたりするが、一次資料としての魅力がある。この時代にシフという日本の恩人であり経済人に対して、日本の政財界や市井の人々がどのように接したのかが、彼の目を通してではあるがよく分かる。

私にとって特に印象に残ったのは、シフは天皇が宮廷での食事に招待した初めての外国の民間人だということ、それとこの重要人物に対して日本のどういう人々が接したかということだ。それと当時の外国人の代表であるシフが日本のどこを見たがったか。富士山、湖、京都、奈良、日光、呉、神戸、横浜、それと韓国にも寄っている。

日本がアメリカとの戦争に進んでいったきっかけとして、日本による満州の独占がある。日露戦争に辛勝した日本だったが、あまり得るものがなかった。日露戦争は日本にとって侵略戦争ではなく、ほどよいところでアメリカに調停を頼んだことで、世界に対し日本が野心を持っていないことを示し、日本の国際的な立場を著しく向上させた。ところが民衆が納得しなかったために、大陸の鉄道経営を行うほどの十分なお金がなかったにも関わらず、ハリマンによる鉄道の共同経営の提案を拒否し、大陸市場を独占しようとした。そこからアメリカとの不和が大きくなっていったとされる。

しかし本書を読むと別の側面が見えてくる。シフはハリマンのパートナーであり、アメリカ大陸ではモルガン商会と鉄道をめぐって争ったのだそうだ。日本はハリマンの提案を拒否したが、その裏にはライバルであるモルガンのビジネスにより鉄道車両の購入と経営資金の貸し出しの提案があったという。この話は結局成立しなかったそうだが、経済なしに政治が語れないという大きな例ではないだろうか。

いまの世も相変わらず経済が政治を動かしていることは確実だが、日本を没落へと導くようなことはしないで欲しいものだ。欧米の資産家は自分の国が滅びようといくらでも行くところはあるかもしれないが、日本の場合は滅びると日本と似た国がないのできっと寂しい思いをする。
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